【3月31日 AFP】30日、ウクライナ各地の7つの空港で一斉にオーケストラと合唱団がベートーベン(Ludwig van Beethoven)の「歓喜の歌(Ode to Joy)」を演奏した。公共の場で大勢の人が突如パフォーマンスを行う「フラッシュモブ」と呼ばれるイベントで、親ロシアの前政権を打倒した流血の政変による犠牲者を追悼するため企画された。

 主催者によるとフラッシュモブは、首都キエフ(Kiev)のジュリャーヌイ(Zhulyany)国際空港とボリースピリ(Boryspil)国際空港、西部リビウ(Lviv)、南西部オデッサ(Odessa)、さらにロシアの影響が色濃い東部のドネツク(Donetsk)、ハルキウ(Karkhiv)、ドニプロペトロウシク(Dnipropetrovsk)の計7空港で、現地時間の午後1時に一斉にスタートした。

 ジュリャーヌイ国際空港では、大統領交響楽団と軍楽隊が共演。制服に身を包んだ楽団が演奏を始めると、普段着の一般市民に扮した合唱団員たちが次々と楽団員の間に混ざり、歌い始めた。周囲には人垣ができ、パフォーマンスの様子をスマートフォンで撮影する人々の姿も見られた。

 ベートーベンの「歓喜の歌」は、欧州連合(EU)が「欧州の歌(Anthem of Europe)」として承認した楽曲で、今回のフラッシュモブは親EU派の新政権への支持表明でもある。主催者は声明で「犠牲者をしのび、ウクライナの統一と主権を示すのが目的」と説明している。

 30日は、親ロシアのビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)前大統領を追放した3か月にわたる反政権デモで、最も多くの死者を出した日からちょうど40日目に当たる。ウクライナ正教会では死後40日目に喪が明けるとされ、祈祷を行う伝統がある。

 一連のデモでは100人余りが命を落としたが、これらの犠牲者はウクライナでは「天国の100人」と呼ばれている。(c)AFP