【3月28日 AFP】人工心臓は、承認後10年が経過した現在でもなおリスクが伴う装置ではあるが、患者が心臓移植手術までの待機期間を生き延びる助けになる可能性があるとの研究論文が、27日にワシントンD.C.(Washington D.C.)で開催された米国心臓病学会(American College of Cardiology)で発表された。

 米シダーズサイナイ医療センター心臓研究所(Cedars-Sinai Heart Institute)の心臓専門医、スワミナサ・グルデバン(Swaminatha Gurudevan)氏率いる研究チームは、末期の心不全患者22人を2か月間にわたって追跡し、米人工心臓メーカー「シンカルディア(Syncardia)」製の完全人工心臓の移植に対して、患者にどのような反応がみられるかを調査した。同社の人工心臓は、この種の装置としては唯一、米食品医薬品局(US Food and Drug AdministrationFDA)の承認を取得している。

 研究発表によると、患者のうちの5人は、60日に及ぶ調査期間の終わりまでに死亡したという。

 それ以外の患者のうち、4人は心臓移植手術を受けて成功し、13人は生存して移植用心臓の提供を待っている。

 グルデバン氏は「われわれは、患者の多くがこれほど順調な経過を示したことを喜んだ。患者らの病状を考えると、死亡率はもっと高くなるとみていた」と話す。

 2012年から2013年にかけて行われた今回の研究では、移植前の病状が最も重症だった患者の中から死亡者が出る傾向がみられた。

 今回の研究で用いられた人工心臓は、2004年にFDAの承認を受けたが、広く使用されているわけではない。移植には複雑な手術を行う必要があり、施術資格を持つ医療施設は数えるほどしかない。また血栓、出血、感染症、装置の故障などのリスクも伴う。

 人工心臓は、体外にある電源に接続される。電源はリュックサックに入れて持ち運ぶことができる。

 人工心臓の使用がさらに長期にわたることが想定されるとすると、外部電池の充電をより簡単に行う方法を開発したり、装置故障のリスクを減らすために非常用電源の選択肢を持てるようにしたりするために、さらなる研究を重ねる必要があるだろう。

 心臓移植を行う必要がある患者は世界に約5万人存在するが、手術は年間5000例ほどしか行われていない。(c)AFP