【3月26日 AFP】仏パリの裁判所は24日、15年間にわたって「掃除具入れ」同然の狭い部屋を賃貸していたアパートの所有者らに対し、借り主の男性に約1万2000ユーロ(約170万円)の賠償金支払いを命じる判決を下した。

 パリ11区の裁判所は、市の条例に違反し、賃貸住宅の広さの最低基準を下回る部屋を貸し出していたとして、男性が借りていた狭いアパートの所有者とその資産管理人に対し、財産権の侵害に対する損害賠償として1万ユーロ(約140万円)、精神的損害に対する賠償として1000ユーロ(約14万円)、転居費用として約815ユーロ(約11万5000円)を賃借人の男性に支払うよう命じた。

 男性が月額300ユーロ(約4万2000円)の家賃で借りていた部屋には流し台はあったが、トイレもシャワーもなかった。

 男性側の弁護士オレリー・ジェフロワ(Aurelie Geoffroy)氏は判決について、「極小住宅」を貸し出そうとする人々にメッセージを送るものだと評価した。

 一方、社会的に恵まれない人たちを対象に住宅支援を行っているアベ・ピエール基金(Fondation Abbe Pierre)は、精神的損害に対する賠償額が少なすぎると批判し「精神的な損害賠償が1000ユーロとは何もないに等しい。人間の苦痛を軽視している。(男性のアパートは)部屋でさえない。掃除具入れ同然だ」と非難した。

 2002年に改正されたフランス住宅法が、住居として合法と認めている最低限の広さは、床面積が9平方メートル、床から天井までの高さは2.2メートル。また天井が傾斜している場合は、その部分の面積が1.52平方メートルまでを居住可能と規定している。(c)AFP