■まれだった異常気象が日常的に

 ドイツ・気候変動ポツダム研究所(Potsdam Institute for Climate Impact ResearchPIK)のジェイコブ・シェーヴェ(Jacob Schewe)氏は「われわれが現時点で行うことのできる評価はおそらく、未来に起きる気候変動の実際の影響をまだ低く見積もっているだろう」と指摘する。同氏は、今回のIPCCの草案作成には参加していない。

 近年の猛暑や洪水は、気候変動がすでに進行中である証拠であり、かつては「異常」だった気候事象の発生頻度が以前よりはるかにまれではなくなる未来の前兆だと多くの科学者らが口をそろえている、とシェーヴェ氏は述べている。

 今回の草案には、次のような危機の数々が記載されている。

・洪水:温室効果ガスの排出量増加により、洪水のリスクは「著しく」増大する。これは欧州とアジアで特に顕著となる。温室効果ガス排出が野放し状態で気温上昇が最も高くなるシナリオでは、深刻な河川氾濫の被害にさらされる人々の数は、上昇幅が低い場合のシナリオに比べて3倍に上る。

・干ばつ:気温が1度上昇するごとに、世界人口の7%に相当する人々が再生可能な水資源の20%減少に見舞われる。

・海面上昇:何も対策が講じられなければ、2100年までに「何億人もの」沿岸住民が住み家を失うことになる。小島諸国や東アジア、東南アジア、南アジアでは、失われる国土が最も大きくなる。

・飢饉(ききん):小麦、コメ、トウモロコシの平均収穫高は、10年ごとに2%減少する恐れがある一方で、農作物の需要は地球人口の増加に伴い、2050年までに最大14%増加する可能性が高い。この深刻な食糧危機の影響は、貧しい熱帯諸国で最も大きくなる。

・生物種の消失:陸生および水生生物の「大部分」は、気候変動によって生息環境が破壊され、絶滅の危機にさらされる恐れがある。