【3月24日 AFP】バングラデシュ南部に広がる世界最大のマングローブ林、シュンドルボン(Sundarbans)の水辺では、カワウソたちが漁船のすぐそばでにぎやかに鳴きながら円を描くように泳ぐ姿を見ることができる。伝統のカワウソ漁だ。

 漁師が岸近くの水中に網を下すと、カワウソたちが次々と川に飛び込んでいく。ただ、カワウソの仕事は魚を取ることではない。マングローブの根元などに隠れた魚やエビ、カニなどを発見し、網まで追い込むのだ。それを、船の上で待ち構えていた漁師が引き上げる。

 漁は通常、夜間に行われ、1晩の漁獲量は4~12キロほどになる。アジア各地でおよそ100年続く漁法だが、現在ではバングラデシュでしか見られない。それも、いまや消滅の危機に瀕している。

 昔はいくらでも魚が取れたが、最近では網を引き上げても空っぽということもある。ここ数年で魚が激減した理由として、ジャハンギナガル大学(Jahangirnagar University)のムハンマド・ムスタファ・フィロズ(Mohammed Mostafa Feeroz)教授(動物学)は堆積物の増加、油田開発や農薬による水質汚染、乱獲を挙げる。

 カワウソ漁で生計を立てる家族はこの25年間で500世帯から150世帯まで減っており、このままならカワウソ漁は20年以内に「完全に姿を消す」だろうとフィロズ教授は警告している。(c)AFP