【3月20日 AFP】消息を絶ったままのマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370便をめぐり、1つの疑問が浮上している。スマートフォン(多機能携帯電話)とソーシャルメディアの時代にあって、乗客の誰一人として、2001年の米同時多発テロの犠牲者がしたように、親族に連絡を取ろうとしなかったのはなぜか。

 だが、乗客からの電話も電子メールもなかったという事実は、現代航空史で最大の謎の一つとなったこの事件の解決に尽力している捜査官らに、手掛かりを与えるかもしれない。

 飛行高度が高すぎたのか。それとも、海上を飛行していたのか。あるいは、機内の気圧の変化により乗客が意識を失っていた可能性もある。

 専門家らは、同機の239人の乗客乗員が携帯機器を使用できた可能性は、地上の携帯ネットワークに近ければ近いほど高まっただろうとしている。ただ、MH370便の乗客や乗員が、高速で飛行する機内で携帯電話による通話を維持することができたとの見方には、懐疑的な専門家が多い。巡航高度を飛行していたとなれば、なおさら難しいとされる。

 携帯電話での通話は、端末とネットワークとの「ハンドシェイク(握手)」と呼ばれる交信がなければ成立しない。そのためには、電波塔と端末の両方から十分な強さの信号が発信されていることが必要だ。

 シンガポールに拠点を置く通信コンサルタントの許志勤(Koh Chee Koon)氏は、同機がレーダーから消えた後に飛行高度を変えていたとする未確認情報が報道されていることに言及し、「理論上は、飛行高度が2万3000~4万5000フィート(約7000~1万3700メートル)であれば、地上の携帯ネットワークが使える通信範囲だ」としている。

 とはいえ、市販の携帯電話の送信出力は限られているのに加え、機体が通信障壁となるため、「携帯電話が携帯ネットワークに十分な強さと質で接続するには、ある程度運頼みになるだろう」と許氏はみている。