【3月29日 AFP】米テキサス(Texas)州の高地に広がる砂漠の一角、メキシコ国境から車で1時間ほどの場所に、マーファ(Marfa)という町がある。一見して世界から隔絶された町という印象を受けるこの町の人口はわずか1900人ほど。鉄道の停車場が設置されて築かれたこの町は、色あせたビルや質素な住宅、人気のないストリートが目に付き、さびれた雰囲気を醸し出している。

 だが、のんびりとしたムードとは裏腹に、マーファは世界中から毎年数千人が訪れる文化的な「理想郷」であり、アート好きな人にとっては「黄金郷」なのだ。

 訪問客は薬局やスーパーマーケットを探すのには苦労するかもしれないが、本屋やギャラリー、劇場やラジオ局、さらには毎年開かれる2つの映画祭や数多くのアールデコ調のオブジェなど、文化的な楽しみには事欠かない。

 この町で16年暮らすアーティストのバレリー・アーバー(Valerie Arber)さんは押し寄せる訪問客たちを「まるで波のようだね」と冗談気味に例えた。

 クリエーティブな業界の有名人も定期的にマーファを訪れており、その中には英テート美術館(Tate)のニコラス・セロタ(Nicholas Serota)ディレクターや女優のシシー・スペイセク(Sissy Spacek)さん、歌手のビヨンセ(Beyonce)さん、ザ・エックス・エックス(The XX)といった先鋭的なバンドのメンバーたちも含まれる。

 フランス人アーティストで、フィールドワーク・マーファ(Fieldwork Marfa)というプロジェクトに携わるファビアン・ジロー(Fabien Giraud)さんは「マーファは現代のユートピアだ。荒涼とした自然美の中にある、思想や芸術をはぐくむための場所さ」と話す。