■「一次的」要素と「二次的」要素

 一つの変異は、内耳の有毛細胞にとって重要な「GATA2」と呼ばれる遺伝子上にあった。有毛細胞にある繊毛は、異なる振動数に応じて動き、聴覚神経を通して脳に信号を送る。

 証拠を示すもう一つの変異は、「へんとう体」と呼ばれる脳の部位で重要な役割を果たす「PCDH7」と呼ばれる遺伝子。へんとう体は、音をパターンに変換する仕組みをつかさどっていると考えられている。

 これらは、遺伝子が運ぶと思われるさらに多くの情報のほんの一部にすぎないが、いずれにしてもDNAで部分的ながらも音楽能力を説明できると論文の執筆者らは述べている。

 広く知られている説によると、音楽的才能には、音調と音階を識別する身体的能力という「一次的」要素があり、これは、個人の文化や環境に左右される演奏技能という「二次的」要素への必須条件だという。

 論文は「音楽的才能は複雑な行動特性」としており、今回の実験はその「一部のみを説明する」ものだと強調している。

 今回の論文では、音楽の創造性、すなわち作曲能力に関する考察は行われていない。(c)AFP