【3月11日 AFP】コンゴ民主共和国(旧ザイール)のおしゃれな男性たちは、自分たちを格好良く見せるためなら、服を紙で作ることもいとわないようだ。

 Cedrick Mbengiさんは「僕は日本人デザイナーや他のデザイナーたちの服も好きですが、紙でできた服のほうがもっと好きです」と語る。23歳のMbengiさんは「サプール(sapeurs)」の熱心な信奉者だ。「サプール」とは、カラフルな服を身にまとったコンゴ人男性らによるサブカルチャーを指す。世界的に有名なデザイナーたちに影響を受けているが、必ずしも彼らのスタイルに忠実なわけではない。

Mbengiさんは、2004年に紙が「他の生地と同じ」ように使えることに気づき、肉や魚、ピーナッツなどの包装紙を使って服を作り始めた。しかし彼が「サプール」のファッションショーで他のデザイナーらを差し置いてひときわ目立ったのは、その「服」を剥ぎ取り、堂々とコットンの下着姿でフィナーレに登場したからだ。

 「サプール」の語源となったSAPE(Societe des Ambianceurs et des Personnes Elegantes、意訳:流行やトレンドを作る人、おしゃれな人びとの集まり)は、隣国のコンゴ共和国の首都ブラザビル(Brazzaville)近郊で1960年代に生まれた。もっとも、アフリカ人男性たちのおしゃれのルーツは、彼らがヨーロッパ人たちのファッションに出会った植民地時代に遡る。

 「サプール」は当初、「ジャンポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)」や「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」、「チェルッティ(Cerruti)」、「ヴェルサーチ(VERSACE)」、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」、「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」、「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」、「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」など、名だたる有名デザイナーの服やアクセサリーを身につけておしゃれをすることが目的だった。

 しかし最近では彼らの活動は、よりエキセントリックな方向へと変化している。

■ヨウジヤマモトやイッセイ ミヤケの服を着る人々も

 約1000万人が生活するコンゴ民主共和国の首都キンシャサ(Kinshasa)では、大半の人びとが日々を生きるのにやっとの苦しい生活をしている。しかし、アーティスト集団のサディ(Sadi)によると、そのうち数千人の人びとが、自他共に認める「サプール」、あるいは自称「サプール」として、服を見せびらかしている。彼らは世界各地に散らばったコンゴ移民からもらったお下がりの服を着ていることが多いという。

 しかし、美術工芸研究所ISAMに勤める美術史研究家のLydia Nsambayi氏によると、国外居住者の多くもまた、経済的に苦しい生活を送っており、もはや故郷の人々に服を送るための資金も工面できなくなってきている。「サプールたちは、自分たちのライフスタイルが維持できないと分かると、リサイクルショップで服を買ったり、ヨウジヤマモトの服と自分が作った服を組み合わせたりするのです」

 中には、「ザラ」など安価なショップの服に転向する人もいるという。またMbengiさんが手がける「100% Paper」や、2009年に「Kadhitoza(地元の言葉で"美しい生き物"という意味)」を立ち上げたBwapwa Kumesoさんのように自分でブランドを始める人たちもいる。

 現在44歳のKumesoさんは「着想を得るのは私達が暮らすアフリカ大陸に住む動物です」と語る。Kumesoさんが作る服には、麻や上質なウール、ギャバジンなどが使われている。「(インスピレーション源は)コウモリ、象、アヒル、ゴキブリなど・・・服は生き物なのです」

 「私はヨウジヤマモトもイッセイ ミヤケも大好きです。でも彼らよりももっと贅沢で派手な服を作っています!私の服の特徴は、変化することです。例えば、留め金を使うことで、コートをバッグに変えられたりします」

■コンゴのファッション産業の全ては職人技に

 毎年2月10日になると、「サプール」たちは、この活動の創始者であるアーティストStervos Niarcos Ngashie氏を追悼し、キンシャサ・ゴンベ(Gombe)地区にある彼の墓に思い思いの格好で集まって踊る。Stervos氏は1995年、麻薬関連の罪に問われ、フランスの刑務所で服役中に亡くなった。

 自身のブランドを立ち上げた当時、周囲からは「クレイジーだ」と批判されたMbengiさんや、「Kadhitoza」を立ち上げたKumesoさんも、もちろんこのイベントに参加する。

 当初はMbengiさんの才能に懐疑的な態度を示していた仕立屋のRoger Bakandowaさんも、今では彼がデザインしたシャツや帽子、オーバーオール、ズボンなどを仕立てている。「100% PaperやKadhitozaといったブランドが面白いと思うのは、彼らが服の中に個性を追求しているからです」とBakandowaさんは語る。

 コンゴのサプールを「良質さに欠ける」と批判する声もあるが、これについては改善の兆しがある。

 Kumesoさんは、コンゴ人有名歌手のパパ・ウェンバ(Papa Wemba)が彼のドレスを着用したことに誇りを持っている。また、ヌジリ(Ndjili)国際空港にあるブティックでは彼の作品が販売されている。

 「こうした取り組みは奨励されるべきです」とLydia Nsambayi氏は語る。「きちんとしたファッション業界というものがない以上、全ては職人技にかかっているのですから」(c)AFP/Habibou BANGRE