ゾウは、マサイ人男性の声を聞くと、1か所に集まって探るように匂いを嗅ぎ、注意深く立ち去った。

 一方、マサイ人の女性や少年、カンバ人の声を聞いても、何の関心も示さなかった。

■大声で話しているのであれば危険ではないと判断か

 論文の共同執筆者、英サセックス大学(University of Sussex)のグレーム・シャノン(Graeme Shannon)客員研究員(心理学)は、「マサイ人とカンバ人の男性がそれぞれの言語で発した同じフレーズをゾウが聞き分けたということは、ゾウが異なる言語を識別している可能性を示している」と話す。

 このことは、ゾウが言葉の意味を理解するということではないものの、ゾウがおそらく声の抑揚や母音の使用などを手掛かりに、より歌っているように聞こえるマサイ人の言語をカンバ人の言語と区別している可能性を示している。

 アンボセリ・ゾウ研究プロジェクト(Amboseli Elephant Research Project)の科学諮問委員会のメンバーで、保全生物学者のキース・リンゼイ(Keith Lindsay)氏は、多くの動物が、人間による一般的な威嚇だけで逃げ出すのに対し、ゾウはマサイ人男性の声を聞いた時に、警戒した上で立ち去っていると指摘。「マサイ人男性たちは狩りのときには静かにしているので、彼らが声を出して喋っているということは、いま狩りの最中ではないということを考える能力がゾウには備わっている可能性がある」と述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN