【3月11日 AFP】メキシコ中央部の工業都市セラヤ(Celaya)には今、日本語講座があり、講師が受講者を「フェリペさん」「クリスチアンさん」と日本語の敬称をつけて呼ぶ声が聞こえる。街の反対側のホテルでは、日本のテレビ放送を受信できるよう屋上に特殊な衛星放送用アンテナが設置され、フロントでは「こんにちは」と迎えられる。

 中央の通りは「メキシコ日本アベニュー」と名付けられ、街の入り口には「セラヤ(を選んだこと)はグッド・チョイスです。ウェルカム・ホンダ」と書かれた大きな看板が掲げられている。

 この看板は「ウェルカム・ジャパン」と置き換えてもいいのかもしれない。

 セラヤをはじめとするメキシコ・グアナフアト(Guanajuato)州の各市は、日本の自動車メーカーであるホンダ(Honda)、マツダ(Mazda)、さらに部品サプライヤーや駐在員たちの到着をもろ手を挙げて歓迎している。

「セラヤの顔が変わる」と同市経済開発部のフェルナンド・ベラ・ノブレ部長はAFPに語った。ノブレ氏のオフィスは、ガラス張りの高層ビルの中のホンダの子会社と同じフロアにある。

■ホンダ、マツダが進出するグアナフアト州

 グアナフアト州は近年、メキシコの比較的安い賃金や米国市場への近さ、多くの国と自由貿易協定を結んでいる点などにひかれて増えつつある外国自動車メーカーの拠点が集まる中心地となっている。

 メキシコは今や自動車生産国として世界8位、自動車輸出国としては世界4位。中でもグアナフアト州は、日本のメーカーの進出先として筆頭候補に挙がる。

 日本はグアナフアト州に対する最大の投資者であり、過去7年間で同州に40億ドル(約4000億円)を注ぎ込み、2万5000件の雇用を創出した。公式統計で同国製造業の最高水準とされる賃金を払い、台頭する中間層の拡大に貢献してきた。

 2月21日にはエンリケ・ぺニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領自らが、セラヤにできたホンダの工場の落成式に出席。その1週間後に大統領は再びグアナフアト州を訪れ、今度はマツダの工場落成式に出席した。

 ホンダ工場の総工費は約8億ドル(約830億円)。さらに同社は4億7000万ドル(約485億円)をかけて送電設備を建設している。またマツダ工場の総工費は7億7000万ドル(約800億円)だという。