■タチアナ「実母は2度も命を授けてくれた」

 マクファーデン氏の隣には、タチアナと血縁関係のある数人のいとこを連れた生みの母親であるニナ・ポレビコワ(Nina Polevikova)さんが並び、「ゴー、タチアナ、ゴー」と書かれた星条旗をうれしそうに振りながら、「Davai(ロシア語で行け!)」と叫んでいた。

 マクファーデン氏は、「ほとんどの人は実母について知りたいとは思いませんが、タチアナは違いました。『実のお母さんは私に2度も命を授けてくれた。最初は私を産んでくれた時で、2度目は私のために養子縁組の書類にサインしてくれた時よ』と言いました」と語った。

 競技を5位で終えたあと、タチアナは車いすを囲む両方の家族と輪になり、ハグやキスを交わす感動的な場面を迎えた。

 ポレビコワさんは「とても誇りです」と述べ、マクファーデン氏の肩に手を回し、「すごいことだわ」と話した。

 タチアナも、「今日は競技前に家族と会い、さらなる元気をもらいました」とコメントした。

「今日は、ただ家族のためにレースを行いました。これがずっと夢見ていた瞬間です」

「私の人生は本当に素晴らしいものです。それは米国の家族が養子にしてくれたおかげです」

「ロシアに戻り、この地を訪れることが大好きです。私は米国国民ですが、自分のなかにはロシア国民であるという意識もあります」

 2012年のロンドン夏季パラリンピックで車いす競技3冠を達成したスター選手のタチアナは、その後も2013年の主要マラソン大会で4度の優勝を飾っている。

 タチアナは当初、上半身の発達がずばぬけたスプリンターとして知られていたが、米国人パラリンピック選手の顔の一人として、雪上競技には昨年から参戦した。

 9日に出場した12キロメートル競技も、今回が2度目の滑走だった。(c)AFP/Maria ANTONOVA