【3月6日 AFP】豪海洋科学者らは6日、オーストラリアが誇る世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)が気候変動によって、2030年までに取り返しのつかない被害を受けるだろうと警告する報告書を発表した。これを回避するためには迅速な行動が必要だと呼びかけている。

「Lights Out for the Reef(サンゴ礁のために明かりを消そう)」と題された報告書は、今月予定されている、照明を消して気候変動への意識を高めようというイベント「アースアワー(Earth Hour)」に向けて、クイーンズランド大学(University of Queensland)のサンゴ礁生物学者、セリーナ・ワード(Selina Ward)氏がまとめたもの。

 この中で、クイーンズランド大学(University of Queensland)の研究員、オーブ・ホーググルトベルク(Ove Hoegh-Guldberg)氏は、世界遺産(World Heritage)にも登録されているこのサンゴ礁は存続の岐路にあると指摘している。

 報告書の序文でホーググルトベルク氏は、「サンゴ礁周辺でも地球レベルでも環境ストレスは増大する一方だ。その軽減に向けた取り組みを強化しなければ、サンゴ礁は消滅してしまうだろう」と述べ、「これは環境活動家らによる推測でも、脅し文句でもない。サンゴ礁研究の世界的権威らによる結論だ」と強調した。

 ホーググルトベルク氏は科学界全体の総意として、二酸化炭素や世界的な平均気温の急上昇により「グレートバリアリーフのサンゴ群が、千年ではなく百年単位で破壊されるのは、ほぼ確実だ」と記している。

 また同氏は「産業革命以前と比較して、世界の平均気温の上昇幅が2度を上回れば、サンゴ礁が生き延びる可能性は極めて低い」としたうえで、「現在の二酸化炭素汚染の上昇推移レベルを、このまま見過ごし続けるならば、世界の平均気温は最低でも3度は上昇する。今すぐ行動しなければ、気候変動がグレートバリアリーフにおよぼす影響は2030年までに取り返しのつかないものとなる」と警告した。

 報告書は、サンゴ礁は海水温上昇や海水中の二酸化炭素量の増加など気候変動の様々な影響に対して脆弱(ぜいじゃく)だと指摘。さらに地球温暖化の速度に対してサンゴの成長が遅いため、今後の数十年間に見込まれる気候変動レベルにサンゴ礁の進化は対応できないと予測した。(c)AFP