■「底辺への競争」、カギは自然資源の「経済化」

 スタッチティー氏の試算結果は、密漁防止のため世界レベルで公海での漁業を全面禁止するよう求める声を支持するものだ。同氏は近日中に試算の詳細を公表すると約束した。

 スタッチティー氏によれば試算では、現代の漁業が採算の合わない事業と化しており、限られた漁業資源を追い求めて漁をすればするほど損失がかさんで海洋資源も枯渇する「底辺への競争」が生じていることが、具体的な数値によって示されたという。

「海の実情は、古き良き時代の経済学に基づいている。だが、その事実は時として、複雑な関係性や短期的な利益、凝り固まった行動様式の陰に隠れて見えない」と同氏は述べた。

 世界海洋サミットには各国の政治家や財界人、環境活動家らが参加し、海洋環境・資源の破壊を経済的価値に換算して、各国の指導者から漁師1人ひとりに至るまで世界中の誰もが真剣に受け止められるようにする必要性が指摘された。世界銀行(World Bank)のレイチェル・カイト(Rachel Kyte)副総裁は、海洋の「自然資本」の価値を各国の富に組み込むことで、資源管理の方法を確実に変えることができると訴えた。

 ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官やモナコ大公アルベール2世(Prince Albert II)公らも同サミットに出席し、命の源である海洋の保護に向けた有意義な行動を呼び掛けた。(c)AFP