【2月27日 AFP】米アリゾナ(Arizona)州のジャン・ブリューワー(Jan Brewer)知事は26日、事業者が宗教を理由に同性愛者へのサービス提供を拒否することを認める法案に対し、拒否権を行使した。

 同法案は先週、議会を通過。支持者らは、事業主の信教の自由を保護する法律になると呼び掛けていたが、米全土の人権団体からは激しい非難の声が上がっていた。

 ブリューワー知事は強硬路線の共和党員として知られるが、双方の意見に耳を傾けた結果、「(法案の)文言の範囲が広く、意図せざる悪影響をもたらす恐れがある」との結論に至ったという。

 アリゾナ州はグランドキャニオン(Grand Canyon)などの観光地を抱え、観光業が地元経済の主軸をなしている。同法案の成立は観光業に打撃を及ぼす恐れがあった。

 また、同州に数億ドル(数百億円)規模の経済効果をもたらす米スポーツ界からも、署名拒否を求める圧力がかけられていた。

 同法案の成立に反対する立場を表明していたのは、来年2月にアリゾナ州でスーパーボウル(Super Bowl)を開催する予定の米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)や、米大リーグ機構(Major League BaseballMLB)、米プロバスケットボール協会(NBA)と米女子プロバスケットボール協会(WNBA)のアリゾナ州のチーム。

 今月ニュージャージー(New Jersey)州で開催されたスーパーボウルは、ニューヨーク(New York)地域に5億5000万~6億ドル(約560億~610億円)の経済効果をもたらしたとされているが、同法案が成立した場合には来年のスーパーボウルの開催地がアリゾナ州以外に変更される可能性もあった。

 NFLは過去にも、1990年にアリゾナ州が公民権運動指導者のマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)牧師の記念日を州の祝日にすることを拒否したことを受け、1993年のスーパーボウルの開催地をアリゾナ州からカリフォルニア(California)州に変更したことがあった。(c)AFP