■環境保護運動VS.地方部の暮らし

 だが環境活動家たちは政府の主張を、科学的な根拠が薄い政治的判断だとして拒んだ。環境保護団体の裁判での勝利は、多くの小規模農家を憤慨させた。

 マグヌッセンさんは、スウェーデン全土でオオカミに攻撃された羊が、2008年の292頭から、2012年には411頭に増加したことを指摘する。「私はオオカミを嫌悪しているわけではない。でも自分の家畜が被害に遭って多くの損失が出れば、廃業になりかねない」という。マグヌッセンさんによれば、オオカミの侵入を防ぐために完全に柵で囲むことは無理であり、コストも高くつき過ぎる。

 オオカミの保護のために多くの犠牲を払っていると語るのは、狩猟者たちも同じだ。カールスタードがあるベルムランド(Vaarmland)県には、約500人の狩猟者がいる。その1人、グンナー・グロエルセンさんはいう。「オオカミだって生きていくために食べなくてはならないことも分かるが、問題はどれだけ食べるのかという点だ」

 全国狩猟協会のスポークスマンも務めるグロエルセンさんは、オオカミによって獲物が激減しているだけでなく、広大な地域でのヘラジカ追跡に欠かせない狩猟犬がけがを負わされてもいると語る。「議会で作成される民主的なルールが適用されなければ、違法狩猟が爆発的に増えると確信している」という。

 法律的なジレンマの解決には何年もかかり、最終的には欧州司法裁判所(European Court of JusticeECJ)まで持ち込まれるとみる向きが多い。だが解決が遅れれば遅れるほど、スウェーデンの地方部の怒りは大きくなるだろう。

「最悪なのはこの無力感。私たちは何も決められない」とマグヌッセンさんはいう。「裁判が続く間、私はここで生活し、自分の事業を続けていきたい。オオカミを撃ちに行って、それを議会の入口に置いたりはしないけど、自分の家畜は守っていく」(c)AFP/Tom SULLIVAN