【2月21日 AFP】ウクライナの首都キエフ(Kiev)で起きた反政権デモと機動隊の激しい衝突により多数の死者が出た前日から一夜明けた21日、同国のビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領は3か月に及んでいる反政権派との対立を終結させるために、両者間で暫定的な和解が成立したと発表した。

 欧州連合(EU)が確認したところによると、ヤヌコビッチ大統領と野党の指導者らは長時間に及んだ協議の末、21日に「一時的な」合意書に調印する見込み。旧ソ連からの独立以来、最悪の危機から脱出するための大きな一歩となることが期待される。

 ヤヌコビッチ大統領は、日程には触れなかったが早期に大統領選挙を実施すると述べた他、改憲や挙国一致政府の樹立に向けたプロセスを開始すると発表した。そうした動きは部分的には野党側の主な要求に応えているが、野党側がこの和解を支持するかどうかは分からず、協議に参加したEU各国の外相らは慎重な姿勢を促している。

 前日20日には、キエフの独立広場(Independence Square)でのデモ隊と機動隊の衝突により、昨年11月にデモが始まって以来最悪の少なくとも60人が死亡した。警察はデモの参加者に対して実弾を発砲し、またデモ側の医療関係者によれば、政権側の狙撃手が建物の屋上からデモ隊を狙い撃ちしたという。

 この事態に国際社会が懸念の声を強める中、政権側と野党側の緊急協議を仲介するためにポーランド、ドイツ、フランスの3か国は外相を、ロシアは特使を派遣した。

 外相が協議に立ち会ったポーランドのドナルド・トゥスク(Donald Tusk)首相は、ワルシャワ(Warsaw)で記者団の取材に応じ「当面、(流血の事態を阻止するという)目標は達成されたが、合意への道は以前極めて遠い。最悪のシナリオが完全に回避できたとは言い難い。この衝突は長く続くだろう。数時間以内、あるいは数日以内にハッピー・エンドが起こるなどというのは、完全に誇張だといえるだろう」と語った。

 今回の事態は、ロシア寄りのヤヌコビッチ政権が昨年11月にEU加盟への前提となる連合協定の署名を見送ったために、怒った親EU派が抗議行動を開始したことが発端。抗議デモはこれまで1月下旬の一時期を除き、概して平和的だったが、今週18日に戦場さながらの騒乱へと豹変した。政権側は過去数日間の死者は77人と発表しているが、反政権側は20日の1日だけで60人以上が警官隊に撃たれて死亡したと主張している。21日には独立広場に2万人が集まり抗議した。

 抗議に参加したセルゲイ・ヤンチュコフさん(58)は「(和解の)ステップは我々が必要としていたものだが、これだけたくさんの血が流された後で、あまりに遅すぎると思う。これは人道に対する罪で、ヤヌコビッチ(大統領)はハーグ(の国際刑事裁判所)へ送られるべきだ」と語った。

 一方、大規模な流血の惨事に衝撃を受けたEUは加盟各国に対し、ウクライナのデモ隊に対する武力行使を命じたことに責任を負う人物に対し、渡航禁止令を発動するよう促している。またイタリアのエンマ・ボニーノ(Emma Bonino)外相によれば、EU本部で行われた緊急会議で「手が血でまみれている者」の資産凍結が合意されたと述べた。米国のジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領も、デモ隊への発砲を命じた当局者に対し、制裁を科す用意があると警告している。(c)AFP/Max DELANY, Marianne BARRIAUX