■ドイツのドクター・ハウス

 手術後の報告書には「患者の血液内のコバルト値とクロム濃度が低下し、彼の容体は少し回復した」と書かれていた。

 手術から14か月後の昨年7月までには、患者の心臓機能は改善し、熱も胃酸の逆流もなくなった。心臓の働きを助けるために除細動器をつけるまでになっていたという。

「ハウス医師のおかげで、コバルト中毒について知っていたことが助けになった」と、診断チームを率いた医師のユルゲン・シェーファー(Juergen Schaefer)氏はAFPに語った。

「エンターテイメントとして優れた医療ドラマは、私たちを楽しませ啓蒙してくれるだけでなく、人々の命も救ってくれるということだ」と、シェーファー医師は言う。

「ドクター・ハウス」は、ほかの医師たちが診断できない病気の謎の解明を専門とする、気難しくてひねくれ者の診断医の話だ。シェーファー氏はこのドラマのファンで、実際の診断が基にしたいくつかのエピソードを、自らの講義で数年前から使っているという。

「珍しい病気に対して生徒たちの注意を引くためだ」と話すシェーファー医師。彼は同僚や学生たち、そしてメディアからも「ドイツのドクター・ハウス」と呼ばれている。(c)AFP/Mariette LE ROUX