■鉄が導く星の年齢

 ケラー氏によれば、ビッグバンで誕生した宇宙は、水素とヘリウムと微量のリチウムで満たされていた。現存するその他の元素は全て、恒星の中で作られたものだ。恒星は、寿命が尽きた巨大な星が超新星爆発を起こした後に残るガスと塵(ちり)の雲の中で誕生する。

 恒星の年齢を判定する方法の1つが、星に含まれる鉄の量を調べることだ。鉄含有量は新しく誕生した恒星ほど多くなるため、スペクトル中の鉄の量が少ないほど、その星は古いということになる。

 ケラー氏は「われわれが報告した星の場合、鉄含有量は太陽の100万分の1に満たず、現在分かっているどの恒星と比べても60分の1未満しかない。この事実は、この星がこれまで見つかった中で最古の星だということを示している」と述べている。論文によるとこの星は、質量が太陽の約60倍の星が爆発した低エネルギーの超新星の中で誕生したのだという。

「SMSS J031300.36-670839.3」は、南天の空を5年にわたって調査中のオーストラリア国立大のスカイマッパー(SkyMapper)望遠鏡によって発見された。同様に鉄含有量の非常に少ない星がこれまで他に4個見つかっており、こうした超新星が初期宇宙での星や銀河の形成に極めて重要な役割を担っていたことを示唆していると論文は述べている。(c)AFP/Richard INGHAM