「好物と家族再会を夢見て」太平洋漂流13か月の日々
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■生死を分けたサバイバル食
メキシコ当局も、2人の捜索を行ったのは12年11月だと確認しているが、アルバレンゴさんは自分が出港したのは12月だったと記憶していた。10代の若い漁師と一緒にサメ漁に出た後「モーターが故障したときは、もう漁は終わっていた。最初は不安じゃなかったが、無線を受信できなかった。そうしている間に強風で沖へ流されてしまった」という。
アルバレンゴさんは、時にボートにぶつかったウミガメを捕まえた。魚も獲り、揺れるボートにしっかり立って近づいてくる鳥を捕まえることも学んだ。生き延びる上で一番きつかったのは3か月間、雨が降らなかったときに「自分の尿を飲まなければならなかった」ことだった。
連れの若い漁師は、こうした食事を受け付けることができなかった。「鼻をつまんでやり、どうにか食べさせようとしたが、吐くのが止まらなかった」。若者は4か月後には死んでしまい、遺体は仕方なく海へ流した。
環礁に漂着し、家が見えたときには勇んで浜まで泳いだ。出てきた2人の住民は、下半身にぼろぼろになった下着を着けただけのアルバレンゴさんを助け、まずはココナツジュースをくれた。
アルバレンゴさんは重度の脱水症状と栄養失調以外、健康には問題なく、4日夜に退院しマジュロ市内のホテルに滞在している。警官2人が警護に付いているものの静かに過ごしているが、マーシャル諸島の人々の間でアルバレンゴさんはちょっとした有名人となり、病院には食料や衣料などを持った人が押し掛けたという。
13か月にわたって漂流した太平洋を逆に渡る旅は、ずっと速く、快適なものになりそうだ。マーシャル諸島と、アルバレンゴさんの出身国エルサルバドルに国交はないが、アルバレンゴさんが長年働いていたメキシコが仲介し、本国送還手続きが進められているという。予定では7日にマーシャル諸島を発ち、ハワイ経由でエルサルバドルかメキシコへ向かう。(c)AFP/Giff Johnson, Suzanne Chutaro