■80年代には下火、近年復活

 米ニューヨークは70~80年代にかけて「ヘロインの都」でもあった。それに先駆ける60年代には、ニューヨーク出身のミュージシャン、故ルー・リード(Lou Reed)が当時のバンド、ベルベット・アンダーグラウンド(Velvet Underground)のまさに「ヘロイン」と題する曲で「キリストの息子になったような気にさせられる」ドラッグだと歌った。

 しかし市当局の取り締まり強化に加え、80年代にはヘロイン注射の回し打ちが後天性免疫不全症候群(エイズ、HIV/AIDS)の流行を拡大する一因となったことから、ヘロイン使用は確実に死を招くとして「タブー」となった。

 ところが近年、状況が再び変わってきているとDEAは指摘する。背景にはメキシコでのヘロイン生産や密輸の増加、アヘン系の処方鎮痛剤で薬物依存に陥った人たちが低価格のヘロインに手を出していることなどがある。

 俳優のホフマンさんも昨年、米芸能情報サイト「TMZ」に対し、処方鎮痛剤を使用した後、20年間使っていなかったヘロインに再びはまってしまったと告白していた。

「ヘロインは死だ」とモーゼス報道官は警告する。「良いヘロインとか、悪いヘロインとか、そんなものは一切ない。不幸にも、そのことを皆がつくづく思い知るために、1人の才能ある俳優の命が犠牲となって奪われた。ここ数年間、ヘロイン常用者が増え続けていることは分かっていたのに、だ」

 昨年9月に米当局が実施した「薬物使用と健康に関する全国調査(National Survey on Drug Use and Health)」によると、米国でのヘロイン使用者数は2007年の37万3000人から、12年には66万9000人へとほぼ倍増している。

 米国立薬物乱用研究所(National Institute of Drug Abuse)によると、生涯に一度でもドラッグとしてヘロインを試した経験がある米国人は420万人。またヘロインを使用した人の23%が、ヘロイン依存に陥っているという。(c)AFP/Jennie MATTHEW