■「夜間経済」の活性化

 しかし、ミレニアル世代は貴重な税源だ。都心部への人口移動を目の当たりにした一部の郊外では、ミレニアル世代にとって魅力的な地域に変わろうという取り組みが行われている。

 ワシントン北西に位置するメリーランド(Maryland)州モンゴメリー(Montgomery)郡では11年の調査で、20~34歳の世代が人口に占める割合が19%と、ワシントンの30%超を大きく下回った。そこでこの傾向を食い止めるために、郡当局はミレニアル世代を引き付けようと「夜間経済」の活性化を目指した専門委員会を設置した。

 委員長のヘザー・ドゥルホポルスキー氏は「将来的な財務の健全性を考えるにおいて、重要な課題に対応しなければいけないことにモンゴメリー郡は気付いた」という。「ミレニアル世代はワシントンなどの都心部に移り、そこで賃金への課税や余暇の出費を通して税金を納めている。モンゴメリーに住むこともできるのに、そうしないミレニアル世代の多くは、郡が何十億ドルもの予算をつぎ込んだ米国トップクラスの公立学校で教育を受けた人たちだ」と話した。

■郊外型アーバン・ナイトライフ目指す

 委員の1人でレストラン経営者のアラン・ポーリレスさんは、仕事後のナイトライフを拡充させることが地域活性化のカギだと考える。ポーリレスさんは「ミレニアル世代の人たちに、住んでみたい場所、仕事をしてみたい場所について聞くと、クールな雰囲気の場所、自宅から徒歩圏にいい感じのバーがあるような所という答えが多い。ほとんど映画に出てくるようなシーンだ」と話した。

 モンゴメリーの委員会では、例えば夜11時過ぎでもライブ演奏ができるといったくつろげる「音出し可能ゾーン」の設置や、人が集える場所として歩道や噴水を拡充することなどを推奨している。

 ポーリレスさんによれば、飲食店の売り上げは食事代とアルコール飲料代で均等でなければならないとの制限を設けている郡の許可法の改革が最大のカギだという。「食事が終わったら、その後にはやることが大してない。ダンスクラブもナイトクラブもない。夜型の人が来たがる場所ではないんだ」

 一方で、郊外からの転出に詳しいライ・ギャラガー氏は、みんなが突然、都心部の高層ビルに住むようになるとは思っていない。そうではなく、現在のアメリカンドリームには様々な形があり、1人1人も様々な夢を思い描いているのだという。「(誰もが)目標とする一つの夢というのは、もはや存在しない」(c)AFP/Raphaëlle PICARD