【2月3日 AFP】2日に米ニューヨーク(New York)の自宅で死亡しているのが発見されたオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマン(Philip Seymour Hoffman)さんは、同世代を代表する個性派俳優として評価されていた一方、そのキャリアの裏では薬物中毒や名声との葛藤に苦しんでいた。

 時として不快かつ衝撃的な役柄に命を吹き込んだホフマンさんの演技は、20年以上にわたり映画ファンを魅了し、楽しませてきた。計算された控えめな演技と大胆な役選びで映画を一変させる力を持ち、『ブギーナイツ(Boogie Nights)』から『リプリー(The Talented Mr Ripley)』まで様々な作品に出演。一風変わったキャラクターで、地味ながらも主演スターたちよりも印象に残る演技を見せた。

 頭脳明晰ながらも自己陶酔型の米作家トルーマン・カポーティ(Truman Capote)を演じた作品『カポーティ(Capote)』では、背筋も凍るような演技で2006年のアカデミー賞(Academy Awards)主演男優賞を獲得。有名俳優の仲間入りをした。

 しかし、俳優として成功しても脚光を浴びることを好まず、2011年10月に発行された英紙ガーディアン(Guardian)のインタビューでは、誰もが自己愛と葛藤していると思うと語っていた。

「朝目覚めて、自分に納得して眠りにつけるようにその日を頑張って生きようとするのは、人間の有り様だと思う」

 さらにニューヨーク大学(New York University)で演劇を学んでいた頃にアルコールとドラッグの中毒と闘っていたことも明かし、2013年には再びヘロインに手を出し、リハビリ施設への入所が報じられた。

■50本以上の映画に出演

 出演した映画は50本以上。『M:i:III(Mission: Impossible III)』(2006年)や『ハンガー・ゲーム2(The Hunger Games: Catching Fire)』(2013年)などの大ヒット作のほか、『マグノリア(Magnolia)』や『パンチドランク・ラブ(Punch-Drunk Love)』などポール・トーマス・アンダーソン(Paul Thomas Anderson)監督の作品にも度々名を連ねた。また、『フローレス(Flawless )』ではドラァグクイーンを演じ、ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)と共演した。

 2010年には『ジャック、舟に乗る(Jack Goes Boating)』で初監督に挑んだほか、テレビや舞台でも活躍した。

 2012年の米誌エスクァイア(Esquire)のインタビューでは次のように語っている。「監督と何のつながりもなく出演するというのは難しい。でも、私の場合はよくあることじゃない。そういう点ではラッキーだ」