【1月30日 AFP】中国の春節(旧正月、Lunar New Year)で大勢が世界最大の民族大移動に加わる一方で、出稼ぎ労働者の中には金銭面の不安などから帰省しない選択をする人たちもいる。

 北京(Beijing)で外国人夫婦の子どものベビーシッターと掃除の仕事をするティアンさん(46)の月給は3500元(約5万9000円)。ここ2年、自分の家族に会っていない。800キロ離れた故郷の河南(Henan)省に戻れば、中国のお年玉、ホンバオ(紅包)を大家族の子どもをはじめ、職に就いていない人たちに渡さなければならない。

 ティアンさんは「めいとおいが大勢いて、ホンバオを用意する余裕がない」ので北京に残るという。「ここに残れば4000~5000元(約6万7000~8万4000円)は稼げるし、祝日なら収入は通常の2倍だ」と話した。

 豊かになる一方、格差が拡大する社会の中で金銭的に圧迫され、都市部で春節を過ごす出稼ぎ労働者が増えている。

 ベビーシッターのルーさんは長距離バスで1600キロ離れた甘粛(Gansu)省へ、21時間かけて帰省する。ルーさんは「大変なのはホンバオに必要なお金だけじゃない。家族全員に会いに行かなくてはいけない。地方のあちこちに散らばって住んでいるから時間もお金も掛かる」と嘆く。バスのチケット代は217元(約3645円)だ。

 春節の期間に働き口を求めるのは貧困層の一部だ。清掃業の紹介業者Fupingの北京支店で働く女性は、「春節を前に100人超が仕事を求めてやって来た。2013年よりもはるかに多い」と話し、「この時期は給料がいいから」と加えた。

 1万3200人の出稼ぎ労働者を対象にした最近の調査によると、約3分の1は春節に帰省しない予定だという。理由は、「稼ぎが少ないのが恥ずかしいから」が36%。「恋人がいないのを親にばかにされるのが嫌だから」、「お金が掛かるから」との回答がそれぞれ18%だった。

 都市部の平均月給は2500元(約4万2000円)前後。春節のシーズンは2倍稼げるとしたら、帰省時期を遅らせる価値は十分ある。ティアンさんは「もっとお金を貯めて夏に家族に会いに行く」と語った。(c)AFP/Neil CONNOR