【1月28日 AFP】マンション高層階にある部屋から植物の生い茂る日当たりのいい廊下に出て、すぐ目の前の果樹園からもぎ取ったリンゴにかぶりつきながら、1つ上の階で乳搾りをする人に「おはよう」と挨拶をする──こんな日常を想像できるだろうか。

 これは、ベルギー人建築家のビンセント・カレボー(Vincent Callebaut)氏(36)が考案した「都市農場」だ。2050年までに推定60億人になるとみられる都市生活者が、より健康的で幸せな生活を手に入れることができるよう設計したという。この全面ガラス張りの132階建のビル内部では、田んぼや庭の間を通ってそれぞれのオフィスへと向かうことになる。

 前衛的な建物の設計を手掛けるカレボー氏の作品について、批評家の中からは「景観を損ねる」、「正気ではない」などと否定的な意見も聞かれる。それでも同氏は、食料や水、エネルギーがより限られたものになる中、未来の都市は自給自足が可能な「有機体」である必要があると説明する。この「都市農場」では、熱や冷気を自動で調節するばかりか雨水を蓄え、家庭内のごみを肥料としてリサイクルすることが可能だという。

 仏パリ(Paris)のオフィスでAFPの取材に応じた同氏は、「未来の新しい生活様式を作り出す必要がある」とした上で、「未来の都市は、高密度で環境に優しく、すべてが相互的関係にある。目標は、都心部に農業と自然を取り戻すこと。そうすれば2050年までには、環境との絶妙なバランスを保ちながら、人々が生活できる環境に優しい持続可能な都市になるだろう」と述べた。

 各国で都会生活者の増加が続く中、持続可能な都市生活の探求はこれまで以上に急がれている。