【2月8日 AFP】「スローフード」の発祥地イタリアから新たに生まれた「スローシティー」運動が世界的に注目を浴びている。

 古城とブドウ畑に囲まれた伊中部ウンブリア(Umbria)州のオルビエート(Orvieto)は、中世からある丘の上の美しい街だ。元ジャーナリストのピエール・ジョルジョ・オリベーティ(Pier Giorgio Oliveti)さんは、「ゆっくりした街」を意味する「チッタスロー(Cittaslow)」という街づくりを韓国やトルコ、米国など28か国に広める手伝いをしてきた。「チッタスローは私たちの今のあり方、今持っているものに満足し、自滅的なことを止め、価値あるものや資源や金銭を枯渇させないこと。有害なグローバリゼーションの解毒剤だ」と話す。

「チッタスロー」運動は、「スローフード」の健康的な暮らしの哲学を都会に広めようとしたトスカーナ(Tuscan)地方のある町長が1999年に立ち上げた。現在加盟している街は183か所。「スローフード」のシンボルのカタツムリが、街を背負っている姿がマークだ。加盟資格は住民が5万人未満であること。さらに有機栽培や都市農業を奨励し、学校で食への感謝を教えるといった基準が厳しく課されている。

 15年前に加盟したオルビエートは、世界中の「チッタスロー」運動の手本となっており本部もある。家族経営の小さなトラットリア(大衆的なイタリア料理店)では地元産のワインやおいしい食べ物が提供され、市場は地域社会の生き生きとした核となっている。家族連れが集うジャズフェスティバルが名物で、ローマ(Rome)やミラノ(Milan)から来る人々はすっかりくつろいで帰る。公害は少なく、訪問者の車は岩壁とマッチした壁に隠れた地下駐車場に止められる。古い水路橋に設置されたエスカレーターを上ると歩行者専用の中心街に至る。

 環境に優しく、人間の等身大の街づくりを目指すスローシティーのメッセージについて、アントニオ・コンチーナ(Antonio Concina)町長は「スローシティーは発展を止めることではない。その二つは両立できる」と言う。しかし失業が過去にない水準に達しているイタリアの経済危機によって、スローシティーも試練を迎えている。