【1月23日 AFP】親ロシアの政権に対する抗議デモが続くウクライナの首都キエフ(Kiev)で22日、デモ隊と治安部隊が激しく衝突し、デモ参加者5人が死亡した。欧州連合(EU)加盟の前提となる連合協定の署名見送りを受けて昨年11月に始まった反政権デモで死者が出たのは初めて。デモを主導する野党指導者は、ビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領が譲歩しなければ、23日に「攻撃を開始する」と宣言している。

 警察と治安部隊は22日、キエフ中心部のフルシェウシキー(Grushevsky)通りにデモ隊が築いたバリケードを突破。石や火炎瓶を投げるデモ隊に対し、催涙ガスと音響閃光弾、ゴム弾などで鎮圧に当たり、初めて装甲車も投入した。デモ隊側の救急隊によると、この衝突でデモ隊に5人の死者が出たが、うち4人は銃で撃たれていたという。検察の発表によれば、これまでに確認された死者は2人。

 一方、2か月にわたるデモで主要拠点となってきた市内の独立広場(Independence Square)では、この日も数万人規模が集会を続行した。野党指導者で元ボクシングWBC世界ヘビー級王者のビタリ・クリチコ(Vitali Klitschko)氏は、集まったデモ隊に向かい「ヤヌコビッチ(大統領)が譲歩しなければ、われわれは明日(23日)、攻撃を開始する」と宣言。流血沙汰を避ける方法は早期の解散総選挙しかないと主張した。

 宣言に先立ってクリチコ氏ら野党指導者らは、ヤヌコビッチ大統領と数時間にわたって会談したが、現段階では現状打破には程遠い状況だという。ヤヌコビッチ政権のミコラ・アザロフ(Mykola Azarov)首相は妥協しない姿勢を見せており、激化するデモ隊を「テロリスト」と非難している。

 ウクライナでは2004年に大規模なデモによって親EU政権が誕生した「オレンジ革命(Orange Revolution)」が起きているが、このときは暴力的な衝突はなく、ほぼ平和裏に政変が進行した。しかし今回は、デモ隊側によれば21日、22日の2日間で負傷者は約1700人に上っており、死者も出る事態に国民は恐怖を抱いている。(c)AFP/Stuart WILLIAMS, Dmytro GORSHKOV