ルッツさんは、シトラス系の香りを有するカスケードに地元ホップを組み合わせることで「フルーティーなだけではなく、ホップの効いたフルーティーな風味」を作り出したかったという。「ドイツ人はあまり極端ではないビールを好むので、抑え気味の風味を作りたかった」。開発された4品種の香りは、ハネデューメロンや芳醇なタンジェリン、シトラス系などと表現される。

■新フレーバーの影響、伝統的な醸造所にも

 1516年にバイエルン(Bavaria)州で制定され、1906年にドイツ全土に適用された「ビール純粋令」は、ビールの原料を水と麦芽、ホップ、酵母のみと定めており、香料や防腐剤の添加は認めていない。この純粋令は、革新よりも伝統や品質に重きを置くドイツのビール文化に貢献してきた。それだけにホップの新品種は当初、懐疑的な視線を浴びた。

 バイエルン州立農業研究所のエリザベート・ジークナー(Elisabeth Seigner)所長は「伝統的なビール愛好家たちは、ジュースなんてごめんだ、欲しいのはビールだと言って、新種ホップのビールに警戒心を示した。だが今では、新種ホップの需要は供給を超えている」と語った。

 ドイツ産フレーバーホップが手に入るようになると、比較的、規模が大きい伝統的な醸造所の間でも取り入れる動きが出てきた。バイエルン州の小さな町ホフ(Hof)にあるマイネル醸造所(Meinel Brewery)は1731年の創業以来、家族経営を続け、醸造するビールの約半分は今も主流のピルスナーだ。

 だが、一家の1人でビール醸造マイスターのギゼラ・マイネルハンセン(Gisela Meinel-Hansen)さんと地元の女性醸造者3人が、2010年に季節限定商品の「Hollandiebierfee」を作り始めた。シャンパンのボトルに入って売られている。マイネルハンセンさんは「女性にもっとビールを楽しんでもらいたいという目標がある。このビールは私たちの大使だ」と語った。

 この冬限定のナッツブラウン・チョコレート・ポータービールは、コーヒーとレッドベリーの風味で、ホップ生産者ルッツさんが開発したホップ4種の1つ「マンダリーナ・ババリア」を使っている。(c)AFP/Carolyn BEELER