同病院の管理者であるノルウェー人のKjell Engkrogさんによれば、この町で初めて帝王切開による出産が行われたのも、この病院だという。

 8000人近くの死者・行方不明者を出し、440万人以上が家を失った台風30号は、バセイの高台地区にあった病院も破壊した。被災地はポルトガルの国土面積と同じくらいの広さに及び、国連や国際援助団体が医療支援を続けている。

  DyviさんがAFPに語ったところによると、昨年3月に交通事故に遭ったレノス君は、台風30号がフィリピンを襲うまで理学療法士による治療など受けたことがなく、ずっと家で寝たきりだったため両脚の筋肉は委縮し、学校に戻ることもできなかった。「おそらく治療費が払えなかったのでしょう」

 Engkrogさんによると、欧州の救援隊が去った後のために地元の医療関係者約60人が現在、実地訓練を受けている。医療機材もすべて、フィリピン当局に引き渡していくつもりだ。

 医療技術を地元の人たちに引き継いでいくことは、今後も住民に優れた医療サービスを提供し続けるために不可欠だ。赤十字の広報担当者は言う。「私たちは(ここに)永遠にはいられないのだから」 (c)AFP/Cecil MORELLA