【1月17日 AFP】(一部訂正)スペインのリゾート地、イビサ(Ibiza)島で売春婦として働く女性たちが、このほど労働者協同組合を設立した。セックスワーカー(性労働者)によるこうした組合が法的に正式登録される例はスペイン初で、組合を通じて納税し、社会保障給付を受ける。

 新設された協同労働型協同組合「セアレール・コープ(Sealeer Cooperative)」は昨年11月、11人の売春婦たちによって立ち上げられた。自らはセックスワーカーではないが、自発的に組合に加入した地元の主婦、マリア・ホセ・ロペス(Maria Jose Lopez)さん(42)がボランティアで代表を務める。組合員は20~30代で、スペイン人やイタリア人の他、詳しくは明かせないが「東」の出身者も含まれているという。現在、さらに40人の女性が加入を申請中だ。

 他の労働協同組合と同様、セアレールの組合員たちも所得を申告して税金を納付することで、公的医療保険や年金などの福祉サービスを受ける資格を得る。

 ビーチを目当てに年間数百万人の外国人観光客が訪れるイビサ島では、夏になるとバーや個人所有のアパートで売春が行われ、大金が動く。「当局はホテルやレストランに対し、従業員全員を登録させるよう法律で定めている。セックスワーカーの女性たちにも、合法的に安心して働ける仕組みを用意するべきだ」とロペスさんはいう。

■売春規制めぐり議論始まる

 スペイン議会の2007年の報告書によると、スペイン国内には当時推定40万人のセックスワーカーがおり、売春産業は1日当たり5000万ユーロ(約71億円)を売り上げていた。

 スペインでは売春は違法ではなく、国レベルの規制も存在しない。ただし同国政府は昨年11月、学校の近くで売春婦と交渉したり、契約を交わした場合に罰金を科す新たな社会安全法案を発表した。すでにバルセロナ(Barcelona)市当局が路上での売買春行為を罰金の対象にしている他、マドリード(Madrid)市当局も同様の規制を検討している。

 雇用・労働問題専門の弁護士としてイビサ島の売春婦たちの相談を受けたことのあるグロリア・ポヤトス(Gloria Poyatos)判事は、協同組合について「性産業で働くことを選んだ女性たちが、売春あっせん業者から自立できるようになるための1つの方法」だと説明。スペイン社会について「変化が起きている。売春を規制すべきか否かに関する議論が社会の中で始まった」と話した。

 ベルギーやデンマーク、ドイツ、オランダなどでは売春が職業として合法化されており、従事する女性たちは社会保険の給付が受けられる場合もある。(c)AFP/Roland LLOYD PARRY