【1月16日 AFP】英ロンドン(London)の警察当局は15日、精神分析学を確立したオーストリアの精神分析学者ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)と妻マーサ(Martha Freud)の遺灰が、盗難未遂の被害にあったことを明らかにした。遺灰を収めた約2400年前の骨つぼが大きな損傷を受けたという。

 ロンドン北部にある火葬場兼霊廟(れいびょう)の「ゴールダーズ・グリーン・クリマトリアム(Golders Green Crematorium)」に安置されていた骨つぼは、紀元前4世紀にギリシャで作られたもので、昨年12月31日から翌1月1日にかけて盗難未遂に遭ったという。ロンドン警視庁は市民らに対し、犯行を企てた「無神経な」者たちの発見に向けた協力を呼び掛けている。

 1939年9月に死去したフロイトの遺灰は、自宅近くの同霊廟に安置され、その後、1951年に亡くなった妻マーサの遺骨も同じ骨つぼに入れられていた。

 この骨つぼは、ギリシア神話のワインと恍惚の神ディオニソス(Dionysus)が描かれたもので、同じ精神分析医で親しい友人であったマリー・ボナパルト(Marie Bonaparte)が生前のフロイトに贈ったものだった。

 ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)の末裔で、ギリシャ・デンマーク王子の妃であったマリー・ボナパルトは、1938年にアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)がオーストリアを併合した際、フロイト夫妻と娘のアンナ(Anna Freud)のウィーン(Vienna)脱出を助けた人物だった。(c)AFP/Alice RITCHIE