【1月10日 AFP】アフガニスタンは9日、同国の旧支配勢力タリバン(Taliban)の戦闘員とみなされて収容されている多数の被収容者を釈放すると発表した。これについて米国は以前から、同国に駐留してきた北大西洋条約機構(NATO)軍が撤退を進める中、これらの被収容者らが再び戦場に戻る恐れがあるとして異議を唱えている。

 アフガニスタン大統領府の声明によると、アフガニスタンのハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領が議長を務める会議が、「バグラム空軍基地(Bagram Air Base)付属収容所の被収容者記録を吟味する委員会に対し、無実または証拠不十分の被収容者については釈放するよう命じた」という。

 この声明によると、88人の被収容者のうち、45人に関する証拠はなく、さらに別の27人については状況証拠しかないという。残る16人については引き続き収容し記録の見直しを行っていくとしている。大統領報道官はAFPに対し、「証拠もないのに国民を勾留し続けるわけにはいかない、違法行為に当たる」と語った。

 バグラム収容所はもともと米国の管理下にあり、同収容所をアフガニスタンの主権回復努力の象徴とみなしていたカルザイ氏との意見衝突を経て昨年3月、その管理権がアフガニスタンへ全面移譲された。今回の被収容者釈放の発表に先立ち、NATOのアフガニスタン駐留軍の司令官を務める米国のジョゼフ・ダンフォード(Joseph Dunford)大将は、被収容者を釈放すれば当時調印された合意内容に反するとして、正式に抗議していた。米国は、この被収容者88人がNATO軍所属の60人とアフガニスタン人57人の死亡に関与していると主張している。

 アフガニスタンと米国の間には、今年中に完了予定のNATO軍撤退以降も米軍の駐留を可能とする米国との安全保障協定の調印をめぐってすでに緊張が高まっており、被収容者の釈放が2国間関係をさらに悪化させる恐れもある。(c)AFP/Usman SHARIFI