【1月9日 AFP】まるで爆撃を受けた後のようながれきの山──だが、古びたアームチェアや人形、子供服などが散乱するこの場所は、サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)の決勝会場となるリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)のマラカナン・スタジアム(Maracana Stadium)の目と鼻の先。がれきと化した品々は、つい最近までこの場所に暮らしていた貧困層の人々の家財道具だ。

 マラカナン・スタジアムのすぐ近くには「ファベーラ」と呼ばれるスラム街の1つ「Favela do Metro」があり、貧しい人々が住んでいた。しかしW杯の開幕を6月に控え、リオデジャネイロ市当局は住民の抗議を無視してスタジアム周辺地域の再開発を強行している。

「寝ていたところを市の当局者たちにたたき起こされ、家から追い出された。身分証明書を持ち出す時間もなかった」と、ファベーラ住民の男性(33)は8日、AFPの取材に語った。

 タクシー運転手をしている別の住民男性(43)も「昨晩、帰宅したら自分の持ち物が全てがれきと化していたよ。当局のブルドーザーによってね」と話した。

 スタジアムそのものも4億5000万ドル(約470億円)をかけて改修が進むなか、ファベーラの取り壊し作業は7日朝に強行された。激怒した住民たちは、スタジアムのすぐ横を走る幹線道路を封鎖して抗議。住民らは夜にも再び道路を封鎖し、路上で物を燃やしてバリケードとした。

 立ち退きを余儀なくされた人々に助言をしているエロイーザ・サミー(Eloisa Samy)弁護士によると、このファベーラからは2010年に少なくとも637家族が、市当局の用意した近隣のアパートに移住させられた。だがその後、まだ取り壊されていなかった約40軒の家屋に貧しい人々が無断で住み着き、暮らしていたという。

 現在も15家族ほどが不法に住んでいるが、市当局は1月末までに全家屋を取り壊すと表明している。7日の取り壊しを免れた家屋の壁には、エドゥアルド・パエス(Eduardo Paes)リオデジャネイロ市長の「指名手配」ポスターが貼られている。(c)AFP/Claire DE OLIVEIRA NETO