■米国の「失望」は本心

 現在は米シンクタンク、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のアジア担当上級副所長を務めるグリーン氏は、「現政権にとって道徳的怒りはそれほど大きくないだろうが、心から失望したと思う。この重要な時期に日米同盟の勢いが大いにそがれるからだ」と語る。

 現職の首相が靖国神社を参拝したのは、小泉純一郎(Junichiro Koizumi)元首相以来のこと。小泉元首相は在任中の2001~2006年に毎年靖国神社を参拝したが、当時のブッシュ大統領と緊密な関係にあった小泉氏を米政府が批判することはなかった。

 A級戦犯容疑で逮捕され不起訴になった岸信介(Nobusuke Kishi)元首相を祖父に持ち、イデオロギーを持っているとして知られる安倍首相。そんな安倍氏が、防衛分野での日米協力など米国が進めようとしている計画を前進させようとしている中で行った今回の参拝を取り巻く状況は、小泉氏の時とは異なるとグリーン氏は指摘する。

「中国は、日米同盟関係強化に向けたあらゆる動きを妨害するだろう。しかし、日本が一連の変革を進める中、米国としては韓国にはこちら側についてもらう必要がある」(グリーン氏)