【12月23日 AFP】慶應大学(Keio University)の研究チームは20日、無線によって2台の装置間で「力」を瞬時に伝える通信機を考案したと発表した。さらに開発が進めば、理学療法士が遠隔地から患者を治療することも可能になるかもしれない。

 同大システムデザイン工学科の大西公平(Kouhei Ohnishi)教授らが開発した「フォーストランシーバー(無線による携帯型力触覚通信機)」は、加えられる圧力の大きさとその圧力に対する抵抗をリアルタイムで双方向通信することが可能だという。

 例えばロボットに応用すると、温度や放射線量が高いなどの理由で人間が立ち入るには危険な区域でも、熟練したオペレーターがこの装置を使って、離れた場所から複雑な作業を実行できるようになるかもしれない。

 大西教授によれば、理学療法の場合、療法士が触れた力や動きを直ちに転送し、また療法士の側でも、例えば重要な情報である患者の手足の動き具合を感じることができなければならない。この技術は、医療介護提供者の負担を軽減すると同時に、患者の利便性も向上させるはずだという。

 また、加えられる力を装置側で増幅させたり減衰させたりすることも可能だという。同教授は、この技術を応用して人間ではできないような建設作業を行うことも可能になるかもしれないと記者団に語った。

 このシステムは、高速処理能力を持つコンピューターに加え、国内のインターネット接続で現在利用可能なWiFiの数倍の接続速度を持つ高速無線通信を使用している。

 大西教授の研究チームはこの技術を実演するために、上部にレバーがある箱型の装置2台を製作した。一方の装置のレバーを動かすと、まるで装置間が物理的に接続されているかのように、もう一方の装置のレバーも全く同じ速度と力で瞬時に動いた。

 この装置を試したAFP記者によると、一方の装置のレバーを使い、もう一方の装置のレバーにフォークを押させてリンゴに突き刺すと、フォークがリンゴの皮を貫く際の抵抗を感じることができたという。

 この装置は将来、さまざまな強さの圧力を加えて材料を加工するレンズ研磨の熟練工のような熟達した職人の技を保存するために使われる可能性があると大西教授は述べている。(c)AFP