【12月23日 AFP】スペインで22日、賞金総額が世界最高の22億4000万ユーロ(約3200億円)となるクリスマス恒例の「太っ腹」宝くじの当せん発表が行われ、4人に1人という高失業率が続く中、各地でシャンパンの栓を抜いて喜びに沸く当せん者たちの姿が見られた。

 スペイン語で「太っちょ」を意味する「エル・ゴルド(El Gordo)」と呼ばれるクリスマス宝くじの抽せん会では、金色の巨大な2個のタンブラーから木製の玉を取り出し、そこに記された当せん番号をマドリード(Madrid)にある旧孤児院、サン・イルデフォンソ(San Ildefonso)学校の子どもたちが歌い上げていく。3時間余り続く当せん発表のテレビ中継に、スペイン各地で何百万人もが画面に釘付けになった。

 通常、当せん金が高額な大型宝くじでは当せん者数は少ないが、スペインのクリスマス宝くじは、その逆だ。1人の大当たり当せん者が出るジャックポットではなく「富を分け合う」ことを目的としているため、数千人の当せん者たちが、いくばくかの利益を手にできる。

 賞金の幅は額面の20ユーロ(約2800円)から1等40万ユーロ(約5700万円)までで、今年の最高賞の当せん番号は「62246」だった。

■夢より現実、当せん金の使い道

 かつては、くじが当たれば新車を買ったり豪華な休暇を過ごしたりといった声が聞かれたものだ。だが2008年の経済危機以降、失業率が26%にもなる現在、当せん金の使い道予定は住宅ローンの支払いや家計費に回すなど現実的なものとなっている。

 1等賞番号のくじ券は計1600枚が販売されたが、その半数あまりは労働者層が多く暮らすマドリード南方のレガネス(Leganes、人口約20万人)で買われていた。

「ベッドに横になっていたんだが、1等がレガネスで出たと聞いて心臓がどきどきしだした」と、1等が当たったアルフォンソ・マルチネス(Alfonso Martinez)さん(53)は語る。マルチネスさんは失業して8か月になる。「本当に(当せん金が)必要だった。どうしても欲しかった。このご時世に53歳で職につくなんて無理なんだ」

 このほか、スペイン北部バスク(Basque)自治州のモンドラゴン(Mondragon)でも1等賞の当たり番号450枚が販売された。モンドラゴンはスペインの大手電気機器メーカー「ファゴル(Fagor)」の本拠地だが、同社は10月に破産を申請し数百人が失業した。 モンドラゴンの宝くじ販売関係者は、多くの1等当せんは人々を「元気づけた」と語った。

 クリスマス宝くじは初開催の1812年以来、これまで中断されることなく催されてきた。スペイン内戦(1936~39年)時でさえ、人民戦線側とフランコ側双方がそれぞれ宝くじを催行している。(c)AFP/Daniel SILVA