【12月21日 AFP】スウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)で路上生活をしているペータ(Peter)さん(55)は食べていくのに必要な2つの物──雑誌とデビットカード読み取り機──を携えてスーパーの前に立っている。

「Situation Stockholm」は貧しい人が収入を得ることを目的に販売されている雑誌だが、ペータさんを含め、この雑誌の販売者はここ数年、ある問題に直面している。現金が使われる頻度が減ったため、雑誌1部を購入するための現金50クローナ(約790円)を持っていない通行人が増えたのだ。

 救いとなったのが雑誌の出版社から支給されたカード読み取り機だ。ペータさんは読み取り機の機能を説明しながら、「購入者がだまされているという感覚を持たないように、段階を踏んで手続きするんだ。これには感心した」と話した。

 欧州中央銀行(European Central BankECB)が最近発表した資料によると、スウェーデンの小売売上高に占める現金の割合はわずか27%だという。オンラインでの売り上げも含めるとこの割合はさらに小さくなる。

 北欧諸国は急スピードでキャッシュレス社会に移行しており、北欧と南欧の決済のあり方の相違は拡大する一方だ。例えば、ギリシャとルーマニアでは今も取引の95%が現金で行われている。

 ただ、スウェーデンでもすべての人がキャッシュレス社会を歓迎しているわけではない。盗みを働こうとした人がストックホルムの銀行に侵入したが、現金の取り扱いがないことが分かり、手ぶらでその場を去ったという事件もあった。