【12月19日 AFP】約5万年前のネアンデルタール人女性の足の指の骨から採取したDNAを調べたところ、当時の別のヒト属と関わりがあったことが示されたとする研究論文が、18日の科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 国際研究チームによるこの研究では、ネアンデルタール人とデニソワ人、ホモサピエンス(ヒト)のゲノム(全遺伝情報)が比較され、これら3グループ間での関係性が示された。

 グループ間での関わりから起きた遺伝子流動により、現代のヒトのゲノムのうち約1.5%~2.1%がネアンデルタール人に起因するものであることが分かった。ただこれはアフリカ人には見られないという。一方、デニソワ人のゲノムでは、約0.5%がネアンデルタール人に起因するものであることが明らかになった。

 研究チームのメンバーで米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)のモンゴメリー・スラットキン(Montgomery Slatkin)教授は、グループ間での関わりが一過性のものだったのか、継続して行われていたものだったのかについては不明とした。

■同系交配の可能性

 他方、小さな集団で生活をしていたと考えられるネアンデルタール人が、同系交配をしていたこともこの研究では示唆された。

 採取したDNAを解析した結果、この女性の両親が、父親が違うきょうだい、もしくは二重いとこ、おじとめい、おばとおい、祖父と孫娘、祖母と孫息子といった近縁関係にあることが明らかになった。

 研究の対象とされたのは、ロシア・シベリア(Siberia)地方アルタイ山脈(Altai Mountains)の洞穴で発見されたネアンデルタール人とデニソワ人の骨。ネアンデルタール人の骨は約5万~6万年前の地層から、デニソワ人の骨は約4万年前の地層からそれぞれ発見されている。

 この洞窟からは、ホモサピエンスが残したと考えられている考古学的人工物も見つかっている。そのことから、ここでは違う時代に3つのグループが生活していたことがうかがえるという。(c)AFP