【12月17日 AFP】竜のスマウグ(Smaug)やゴラム(Gollum)、オークたち――J・R・R・トールキン(J.R.R Tolkien)のファンタジー小説「ホビットの冒険(The Hobbit)」に登場する悪役たちを、優しい心で思いやってみてほしい。もしも彼らがたまにキッシュやサラダ、もしくはスモークサーモンを食べ、しばしば日光浴をしていたなら、物語の結末は彼らに味方していたかもしれない。

 こうしたキャラクターたちが、人間やエルフ、ドワーフたちとの戦いに敗れ去った理由は、ビタミン不足だったとするユニークな研究論文が15日、医学誌「オーストラリア医学ジャーナル(Medical Journal of Australia)」のクリスマス特別号に掲載された。

 物語の悪役たちは日光を嫌ううえ、腐った肉または(ゴラムの場合は)時たま洞窟の魚しか食べない偏った食生活を送っている。このため骨の健康や筋肉増強に欠かせないビタミンDが不足しているというのだ。

 論文を発表したのは、英ロンドン大学インペリアルカレッジ(Imperial College London)のニコラス・ホプキンソン(Nicholas Hopkinson)博士と息子のジョゼフ(Joseph Hopkinson)さん。

 親子は「ホビットの冒険」の登場人物たちの生活環境や食習慣を調べあげ、紫外線を浴びたり、魚の脂、卵黄、チーズなどを食べたりしたときに生成されるビタミンDの量を分析した。

 主人公のビルボ・バギンズ(Bilbo Baggins)の場合はビタミンDを豊富に摂取できる生活を送っていることが分かった。ビルボは穴の中に住んでいたが、穴には窓があったし、太陽の下で庭に座って過ごすことが好きだった。

「ホビットの食生活は実に多様だ。ビルボは、自分を泥棒として仲間に入れようとやって来たドワーフたちにケーキ、紅茶、種入りケーキ、エール、ポーター、赤ワイン、ラズベリージャム、ミンスパイ、チーズ、ポークパイ、サラダ、冷製チキン、ピクルス、りんごのタルトなどを振る舞っていた」

 これに対し悪役たちは、人生のほとんどを暗闇の中で暮らし、栄養源は乏しいか、同じ食べ物からしか得ていなかった。

 論文は「『ホビットの冒険』の文章を体系的に分析した結果、善が悪に勝利した一因は、邪悪な登場人物たちの食生活が貧しく、日光を十分に浴びていなかったことにあるとの仮説が証明された」と結論づけている。(c)AFP