【12月14日 AFP】ゆったりと編み物や魚釣りをする様子や壮大な景色を、何時間も、時には何日も放送し続ける「スローテレビ」と呼ばれる番組が、ノルウェーで記録的な視聴者数を獲得している。

 ノルウェーの公共放送局NRKは、ゴールデンタイムに放送しているドラマや娯楽番組の一部を変更し、フィヨルドを周遊するクルーズ船からの眺めを長々と映したり、暖炉の火が燃える様子が何時間も続く番組を放送している。

■淡々とした映像、最長134時間ノンストップ

 息をつく暇もないような展開やこみ入ったストーリーとは全く無縁で、カタツムリのようにのんびりと、しかも中断することなく最長で134時間続く映像は、今やちょっとしたノルウェーの名物となっている。

 NRKの番組制作局長ルネ・メクレブスト(Rune Moeklebust)氏は「これは文字通りのリアリティー番組。編集によって削られることもなく、リアルタイムで放映される正真正銘の現実だ」と語る。

 この番組のアイデアは、2009年に首都オスロ(Oslo)と同国第2の都市ベルゲン(Bergen)を結ぶ鉄道路線が開通からちょうど100周年を迎える機会が巡ってきたことから生まれた。列車に搭載されたカメラによって、全行程7時間16分の鉄道の旅が撮影された。長く暗いトンネルを抜ける場合のようにより単調な場面には、過去の映像が挿入された。

 このアイデアは独創的で、番組制作も容易なため、公共放送ゆえに商業的な制約がないNRKはすぐに採用。二つの全国チャンネルのうちの一つ「NRK2」で実験的に放送してみたところ大当たりし、同国人口の約4分の1に当たる約120万人の視聴者が、少なくとも1度はチャンネルを合わせたといわれるほどのヒットとなった。

「数日後、(ノルウェー沿岸を周遊するクルーズ船の)コースタル・エクスプレス(Coastal Express)からのライブ中継にチャンネルの電波を5日半ほど貸してもらえないかと尋ねたところ『いいよ、もちろん』と言われた」とメクレブスト氏は話す。

 この船旅の番組は、列車の旅に続き再び成功を収めた。320万人が旅のいずれかの部分を視聴し、各地の寄港先には何百人もが見物に集まった。ノルウェー王室のヨットが偶然このクルーズ船とすれ違った際には、デッキからソニア王妃(Queen Sonja)が厳かに手を振り、王室も同番組の人気獲得に一役買うことになった。