【12月11日 AFP】インドとパキスタンによる核戦争で世界は飢饉(ききん)に陥って20億人が死へと追いやられ、人類文明は事実上、終わりを迎えると予測する研究結果を、ノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議(International Physicians for the Prevention of Nuclear War)」と「社会的責任を果たすための医師団(Physicians for Social Responsibility)」が10日発表した。

 報告書は、 核兵器を使用した紛争は、たとえ局地的なものであっても大気を汚染して穀物生産に打撃を与え、その影響は世界の食糧市場の大混乱によって増大すると予測している。

 両団体は2012年4月に、核戦争による飢饉で10億人以上が死亡すると予測した論文を発表しているが、今回の報告はその第2弾。前回の発表時には、人口が世界で最も多い中国への影響を低く評価し過ぎており、中国が深刻な食料不足に陥った場合を計算し直したという。論文を執筆したアイラ・ヘルファンド(Ira Helfand)氏は「発展途上国で10億人が死ねば人類の歴史で例を見ない大惨事だが、さらに中国の13億人が危機にさらされれば、われわれは明らかに文明の終わりに近づく」と述べている。

 ヘルファンド氏は、限定的であっても核兵器が使われれば、世界に破局的な影響がもたらされると述べている。現在の核兵器は1945年に計20万人が殺りくされた広島・長崎の原爆よりもずっと強力になっている。「米国とロシアの間で大きな戦争が起きれば人類は滅亡する恐れがある。そうした戦争が起きれば、地球のどこかで生き残る人がいたとしても、今までに人類が目にしたことのあるものをはるかにしのぐ大混乱が生じるに違いない」

 今回の論文では、英国から独立して2国に分かれた1947年以来3度の戦争をしているインドとパキスタンを検討した。両国関係は長年緊張しており、双方とも核兵器を保有しているためだ。

 論文によれば、南アジアで核戦争が起きれば、黒色炭素のエアロゾル粒子が大気中にまき散らされ、米国では10年でトウモロコシと大豆の生産量が約10%減る。また中国各地の穀物生産量は、コメが4年で平均21%、その後の6年でさらにもう10%減り、小麦が最初の1年で半減、10年後になっても核戦争前の水準を31%下回ったままの状態となる。

 核戦争の影響を正確に予測することは不可能だが、ヘルファンド氏は、核保有国の政策立案者たちは核による飢饉の可能性を十分に検討していないと警告し、核による飢饉を避けるには核廃絶しかないと指摘する。「あまりに規模の大きな災害で、準備などまったく不可能。避けるしかない」

 米国のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は2009年の演説で「核兵器のない世界」を目指すと表明したが、他の国々が核兵器を保有する限り米国も保有するとも述べた。現在9か国が核兵器を保有しているとされており、現存する核兵器の大半を米国とロシアが保有している。(c)AFP/Shaun TANDON