【12月10日 AFP】(写真追加)北朝鮮の国営メディアは9日、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記の叔父で、解任が発表された張成沢(チャン・ソンテク、Jang Song-Thaek)国防委員会副委員長が、制服を着た警備員に連行される場面を写した写真を公開した。専門家らはこれを、金正恩氏の容赦ない独裁体制を裏付けるものと指摘している。

 韓国・ソウル(Seoul)にある北朝鮮大学院大学(University of North Korean Studies)の梁茂進(ヤン・ムジン、Yang Moo-Jin)教授によると、粛清を受けた高官の侮辱的な写真が公開されたのは、1970年後半以降、例がなかったという。

 北朝鮮は9日朝、同国の最高機関である国防委員会の副委員長を務め、一時は影の実力者ともみなされていた張氏について、汚職や不適切な女性関係、派閥形成などの「犯罪行為」を理由に、公的な全職責と党員資格を剥奪したと発表。これは2011年12月に故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記が死去し、息子の金正恩氏が後継に就いて以来最大の政変といえる。

 国営メディアは連行される張氏を写した2枚の写真に加え、張氏の解任を正式に決定した8日の労働党中央委員会政治局拡大会議(Political Bureau of the Party Central Committee)に出席する金正恩氏を写したとされる写真も公開したが、張氏を写した2枚と比べて鮮明に写っており、これらが全て同時期に撮影されたものかははっきりしない。

 韓国では、張氏の写真2枚は、8日の会議よりも前に撮影されたのではないかという臆測も飛び交っている。しかしこういった写真が公開された事実や、北朝鮮の国営メディアが張氏の容疑を細かく羅列して報じたことも、前例のないこととされる。

 故金正日氏の強力な妹の夫である張氏は、後継となる金正恩体制の確立に鍵となる役割を担った。識者らは、強まる張氏の影響力と政治力に、金正恩氏が憤怒したのではないかとみている。(c)AFP