【12月8日 AFP】後天性免疫不全症候群(エイズ、AIDS)を発症させるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し、骨髄移植後にHIV陰性に転じていた男性2人が再び陽性になっていたことが、米研究者らの発表で6日までに明らかになった。専門家らはこの結果について「残念」だと語る一方、HIVの潜伏を解明する上で重要な手がかりを新たに提供するものだとしている。

 この発表は、米ボストン(Boston)のブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)感染症科の医師で研究者のティモシー・ハインリック(Timothy Heinrich)氏が5日、米フロリダ(Florida)州マイアミ(Miami)で開かれたAIDS関連の国際会議で行った。それによると、この男性2人はホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma)の治療のため、それぞれ2008年と2010年に骨髄移植を受け、約8か月後に検査でHIV陰性となった。その後も抗レトロウイルス療法を継続していたが、今年になって薬の服用の停止を決めた。

 7月に医師団は、2人が薬の服用をやめてからそれぞれ7週と15週を過ぎた時点の検査結果が陰性だったと報告し、治癒への期待が高まった。ただ1人は服用をやめてから12週後、もう1人は32週後に、検査で再び陽性を示した。これまでにAIDSが治癒したと判断されているのは、HIV耐性を持つまれなドナーから提供された骨髄を移植して白血病を克服し、6年間陰性が続いている米国人のティモシー・レイ・ブラウン(Timothy Ray Brown)氏だけという。

 HIVはCCR5という受容体を使って細胞に侵入する。ブラウン氏は遺伝的にCCR5を持たないドナーの骨髄を移植されたのに対し、2人はCCR5を持つドナーから骨髄を提供されたため、HIVに対する抵抗力を獲得することができなかった。

 ハインリック氏はAFPに対し、「患者のHIVが検出可能な水準に戻ったのは残念だが、科学的な意義は大きい」と述べ、「この研究でHIVの病原巣が、従来承知されていたよりも深い場所にあり、持続性があることが分かった」と強調した。また、同氏は「2人は治療を再開し、現時点の健康状態は良い」とコメントし、本人たちの意向を踏まえて、2人の身元はメディアに公表しないと付け加えた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN