【12月9日 AFP】米国で急増する「はしか」発症例について、研究者らが5日、欧州のはしか流行にその原因があると発表した。はしかウイルスは伝染性が強く、子どもにはしかの予防接種を受けさせない風潮に対して懸念の声が上がっている。

 米国では、ほぼ消滅したとされてから約10年が経った「はしか」の発症例が、今年これまでに175例確認されている。米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)に掲載された政府報告書による過去10年間の平均は60例で、ほぼ3倍に上る。

 米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)の広報担当者はAFPの取材に、米国で今年報告例が急増している「はしか」で、外国から直接伝わったとされる52例のうち約半数に上る25例が欧州からの輸入感染だと語った。うち、ドイツからの感染が6例、英国とポーランドからが各4例、イタリアからが2例であることが判明しているという。

 1963年に承認されたはしかワクチンの開発者の1人で、米デューク大学医学部(Duke University Medical School)小児科のサミュエル・カッツ(Samuel Katz)名誉教授は、記者会見で「資源の乏しい国からだけでなく英国やスペイン、フランスなどからも感染している。こうした国ではしかを根絶できていないことが、米国への輸入感染の主要因だ」と述べた。

 欧州疾病対策センター(European Center for Disease Prevention and Control)によると、欧州連合(EU)諸国では2012年4月~2013年3月までの間に計8100件を超えるはしかの症例が報告された。

 一方の米国はJAMAによれば、2001~11年の10年間で、100万人につき1件以下という感染率の低さを達成したところだった。同期間、米国で報告されたはしかの症例は計911件だけだった。

 米国では昔、ほとんどすべての子どもがはしかにかかり、毎年数百人単位の死者が出ていた。はしかの予防接種を避ける風潮は感染拡大の原因となり、そうした過去を思い起こさせる。会見に出席したCDCのトム・フリーデン(Tom Frieden)局長は「ワクチンの失敗なのではなく、予防接種をすることができていない。米国ではしかにかかった人の約9割が予防接種を受けていない」と述べた。

 マラリアに関する国連事務総長特使事務所のマーク・グラボースキー(Mark Grabowsky)氏はJAMAに寄稿した論説で、予防接種こそが「公衆衛生の勝利だ」と強調しつつ「米国の予防接種プログラムに対する最大の脅威は、保護者が子どもに予防接種を受けさせない風潮だ。米国でも、欧州ほどでないにしても、その風潮が拡大している」と述べた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN