【12月4日 AFP】軍や民兵によるレイプが横行し、何万人もの女性が残忍な暴行を受けているコンゴ民主共和国。同国で被害女性を治療する医師の草分けとなったデニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege) 医師が11月30日、レイプはジェノサイド(大量虐殺)や化学兵器と同様、絶対に許されない一線だと訴えた。

「みんなナチス・ドイツで起きたことを見て、ジェノサイドを怖がっている。化学兵器も恐れ、決して越えてはならない一線としてきた……だが、レイプが戦争兵器として使われることについては、言葉を濁す」とムクウェゲ医師は語る。

 レイプ被害者の治療のために病院や基金を設立したムクウェゲ氏は、これまでに何度もノーベル平和賞の候補に挙がっている。今回AFPの取材には「もう一つのノーベル賞」と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞(Right Livelihood Award)」 を受賞するために訪れていたスウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)で応じた。

 紛争地帯のコンゴ東部では、女性が頻繁に標的とされる。ムクウェゲ医師は、自分の夫や子供もいる公衆の目前でレイプされた女性たちや、性器を焼かれ痛めつけられてクリニックを訪れる女性たちの凄惨な話を語った。

 ムクウェゲ医師は、戦争兵器として用いられるレイプが、女性たちとコンゴという国にすさまじい結果をもたらしているという。「レイプは女性と社会を破壊する。認知されることのない子が生まれ、女性は2度と子供を産めない体になる。これはジェノサイドと同じだ。なぜなら女性器を壊すことは、女性をおとしめ、人口増加を妨げることになるからだ」

 ムクウェゲ医師の病院には毎年、3500人以上のレイプ被害者が訪れ、女性器の再建手術を受ける。「この問題を解決できないDRコンゴの無能さを国際社会も傍観しているだけとは、現代の大きな悲劇だ。残虐行為はもう20年続いており、暴漢グループや民兵たちによる暴行の手口は年々ひどくなっている」と訴える。

 同氏は2000年に採択された国連決議を適切な措置の一例として評価するが「『この線を越えることは絶対に許されない』という確固としたレッドラインはない」と指摘する。国連安全保障理事会決議1325号は、すべての加盟国に対し、女性と女子の人権を保護する法や制度、とりわけ性暴力からの保護を求めるにとどまっている。(c)AFP