【12月3日 AFP】切迫流産の痛みの中、ローマ・カトリック教会系の病院から2回自宅に帰された米国人の女性が、あらゆる中絶を禁止する治療方針を課している米教会団体を相手取り、訴訟を起こした。訴状を提出した米国自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)が2日、発表した。

 訴状は、中絶が殺人であると信じる教会団体の規則のために、母体の健康に危険を及ぼす前に中絶を行うという適切な治療を医師が実施できなかったと主張している。

 訴えを起こされたのは、宗教および倫理的指導書を策定した米国カトリック司教協議会(US Conference of Catholic Bishops)。同協議会は訴訟についてのコメントを拒否した。

■破水、痛み、出血、発熱のなか自宅に帰される

 米ミシガン(Michigan)州地方部に住むタマシャ・ミーンズ(Tamesha Means)さんは2010年12月、妊娠18週に早期破水を起こし、自宅そばにある唯一の病院マーシー・ヘルス・パートナーズ(Mercy Health Partners)に駆け込んだ。

「病院側は私に選択の余地を一切与えなかった。病院側は、私の体に起きていることについて教えてくれなかった」とミーンズさんは声明で述べた。

 胎児が生存する可能性はほぼなかった。だが病院側は妊娠を続けた場合に深刻な感染症に発展する危険性があることを告げず、鎮痛剤だけを渡し、一週間後の彼女の通常検診に訪れるよう伝え、ミーンズさんを自宅に帰したという。3人の子どもがいるミーンズさんはこの対応に「健康な赤ちゃんが産める」と誤解した。

 だがミーンズさんは翌日早朝、病院に再び駆け込んだ。出血と陣痛が始まったからだ。だが発熱が治まるやいなや、ミーンズさんは再び自宅に帰された。

 ミーンズさんはその夜、再び病院に戻った。「痛みと感染症の兆候があった」ものの、病院でできることはないと言われたという。

 しかし、退院許可書の作成中、胎児の足が子宮頸部から飛び出した。産まれた赤ちゃんは3時間後に死亡した。

■病院側は宗教・倫理指導に基づく「適切」な行為と判断

 公共医療監視プロジェクトが、同病院での「妊娠した女性が流産し、早期破水と診断された事例は少なくとも5例」において、陣痛促進剤が使用されなかったことを突き止め、ミーンズさんの事例が初めて明るみに出た。

 訴状によると、病院側は今年、ミーンズさんの事例を調査したものの、胎児の生存能力が確立する前に促進剤を使用して陣痛を起こすことを協議会が禁止しているため、陣痛促進剤を使用しなかったことは「適切」な行為だったと結論づけていたという。(c)AFP