【12月3日 AFP】タイのインラック・シナワット(Yingluck Shinawatra)首相は2日、現行の民主政府の停止とシナワット首相の辞任を求める反政府デモの要求を拒否すると発表した。同国では反政府デモ隊と治安部隊との衝突が続いている。

 反政府デモ隊は、現行の民主政府をただちに停止して「人民評議会」に置き換えることを目指している。7年前に国王派の軍部がシナワット首相の実兄にあたるタクシン・シナワット(Thaksin Shinawatra)元首相を追放して以降、タイでは騒乱が相次いでいる。

 機動隊はバンコク(Bangkok)市内の政府庁舎の警備を強化しており、投石するデモ隊に対しゴム弾や催涙弾、放水銃を使用。週末の機動隊とデモ隊の衝突では数人が死亡、100人以上が負傷し、2010年の反政府デモ以来最悪の政治的衝突に発展している。

 タイでは観光シーズンがピークを迎えつつあり、同国の収入源である観光部門を中心としてタイ経済への影響に懸念の声が上がっている。特にバックパッカーたちの拠点は、衝突現場からわずか数キロメートルしか離れていない。

■タイ首相は要求拒否、デモ隊は「タクシン体制の根絶」目指す

 長期化する反政府デモで初めての死者が出た11月30日夜以降、初めてのテレビ演説を行ったインラック・シナワット首相は、デモ指導者らの要求は国の法に違反しており、同意することはできないと表明。「人々を幸せにできることなら、私はそれらをすべて行うつもりだ。だが首相として、私ができることは憲法の範囲内でなければならない」と述べ、「(私は)権力に固執していない」と付け加えた。

 さらにシナワット首相は、退陣や総選挙の実施を検討したものの、反政府デモ側がこれらの行動を不十分だとして拒否していると述べ、政府側は平和を取り戻すための「あらゆる選択肢」に耳を傾ける用意があると主張した。

 反政府デモの指導者、ステープ・トゥアックスバン(Suthep Thaugsuban)前副首相は1日、軍司令官らの出席の下で開かれた首相との秘密会合の中で、2日以内にシナワット政権を追放し、「国民に」権力を移譲するよう最後通告を出した。

 デモ隊は選挙の実施を拒否しており、インラック・シナワット政権の背後にいるとされるタクシン元首相による「タクシン体制」を根絶したいと述べている。

 タイ警察当局は2日夜、国家反逆の容疑でステープ氏に対して逮捕状を取ったことを明らかにした。国家反逆での罪は、最高で死刑となる。(c)AFP/Apilaporn VECHAKIJ