米固定電話、デジタル完全移行を目前に課題
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【12月2日 AFP】米国では固定電話網が急速に新しいテクノロジーに取って代わられつつあり、この移行の最終段階をどう管理していくかについて、規制当局は頭を悩ませている。
銅線と交換局からなる固定電話網が最終的にいつ葬り去られるのかは不明だが、いまだ約1億人の米国人が、この時代遅れのネットワークを頼りにしており、移行による影響は議論の的となっている。
米連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)は来年1月に、IP電話に正式移行するための規則を策定しようと準備を進めている。FCCのトム・ウィーラー(Tom Wheeler)委員長は、技術の進歩を歓迎する一方で、普遍的な電話サービスを確保するための「価値観」は維持していくと語っている。
■ニーズ少、負担となった固定電話網
しかし、デジタル化への移行については、政府は介入せず、市場に任せるべきだという意見もある。すでに多くの人々が、固定電話の代わりにインターネット回線を使った音声通話や携帯電話、スカイプ(Skype)などのウェブチャット・システムを利用しているからだ。
父ブッシュ政権で情報通信政策顧問を務めた、調査・コンサルティング会社プレカーサー(Precursor)のスコット・クリーランド(Scott Cleland)氏によれば、移行の4分の3はすでに完了している。仮に固定電話の存続を人々が望んだとしても、機器はもう製造されておらず、メンテナンスに必要な技術者たちも引退しているという。
同氏は、固定電話からの移行は命令や価格上限設定のような「厄介な経済的規制」に妨げられるべきではないが、残っている問いはもはや固定電話の利用者がいなくなるかどうかではなく、最後の1人が止めるのはいつかだけだと述べる。
長年、米国の全国民に安価な電話サービスが提供されるように基準を設けてきたFCCにとっては、この点が重要な問題となってくる。
数十年前までは事実上、電話サービス市場を独占し、いまだ多くの固定電話回線を有している米通信大手AT&Tは、FCCに移行を早めるよう圧力をかけている。同社のジム・シッコーニ(Jim Cicconi)上級副社長は「わが社の現在のインフラは、約1世紀にもわたってサービスを提供してきたが、もはや米国人のニーズを満たさなくなっている」という。
古い電話網を廃止することでAT&Tやその他の通信企業は、時代遅れとなったインフラの維持や取り換えに必要な多額のコストを節約できる。ジョージタウン大学(Georgetown University)の調べでは、2006~11年にかけて地方の電話会社が古い電話網に費やした額は810億ドル(約13兆円)で、ブロードバンドのインフラに投じた730億ドル(約12兆円)を上回っていた。
■固定電話の社会的価値「誰もに電話を」は維持できるか
しかし古い電話回線を廃止することは、特に携帯電話やブロードバンドへのアクセスがない貧困層や地方に住む人たちにとって、ライフラインの終わりを意味するのではないかという懸念も残る。電話に関する規制に盛り込まれている社会的価値観も失われてしまうだろう。
デジタル市場での権利擁護などに取り組む団体「パブリック・ナレッジ(Public Knowledge)」のハロルド・フェルド(Harold Feld)氏は「テクノロジーの進化を止めたいとは思わないが、都市の住民や金を払える人だけではなく、これからも誰もが電話サービスを利用できるようにすべきだ」という。
また同氏は、携帯やIP電話は便利だが、固定電話回線ほど頼りにならない面もあると指摘する。大型ハリケーン「サンディ(Sandy)」が襲来した後、地域の電話会社は固定電話網の修繕を拒み、人々に新しいテクノロジーへの移行を促したが「それは安定したシステムではなかった」という。
当局は、デジタル化への完全移行は厳しい期限を設けず、段階的に行うとしている。(c)AFP/Rob Lever