【12月2日 AFP】新婦は男性として生まれ、新郎は女性として生まれた──そして、新郎のおなかの中には2人の赤ちゃんがいる。こんなアルゼンチン人カップルが先月29日、結婚した。新婦ではなく新郎が妊娠した状態で結婚したカップルは、アルゼンチンでも初めてという。

 アルゼンチンは2010年、中南米で初めて同性婚を合法化した。その2年後には、体と心の性の不一致を強く感じるトランスセクシュアルの人々が、生まれた時の性別ではなく、自認する性別を身分証明書などの公的書類に記載することを認める法律が成立した。

 こうした中で、カレン・ブルセラリオ(Karen Bruselario)さん(28)とアレクシス・タボルダ(Alexis Taborda)さん(26)は11月29日、アルゼンチン北東部ビクトリア(Victoria)の裁判所で民事婚を挙げた。

 トランスセクシュアルやトランスジェンダーの権利向上を目指す活動家同士として首都ブエノスアイレス(Buenos Aires)で出会った2人。結婚は2人にとって、共に歩む旅路において新しい大きな一歩を踏み出したことを意味する。

「とても感動的でユニークな、実に特別な1日でした。僕たちの夢がかなったんです」。AFPの電話取材に応じた新郎のタボルダさんは、民事婚を挙げた喜びをそう語った。

 次なる一歩は、自分を男性だと認識し法的にも男性と認められているタボルダさんの出産だ。おなかの中には、2人にとって初めての子となる妊娠36週の赤ちゃんがいる。このカップルは2人とも、性別適合手術を受けていない。

 母性本能はあまりないと告白するタボルダさん。12月22日に帝王切開で女の子を出産する予定だ。名前は「ヘネシス・アンヘリーナ(Genesis Angelina)」に決めているという。「カレンは、僕が赤ちゃんにお腹を蹴られたり、妊娠に伴うさまざまな症状を抱えているのを、自分も感じたくてうずうずしています。そんな彼女の様子を見るのは、すごく変な気持ちです」

 2人は、アルゼンチンで性別適合手術を受けずに結婚したカップルは自分たちが初めてだと主張している。カトリック教会でも挙式したいと望んでおり、アルゼンチン出身のフランシスコ(Francis)ローマ法王に自分たちの事例について電子メールを送った。まだ、返事はないという。(c)AFP