【11月28日 AFP】仏パリ(Paris)で最近、80代の夫婦2組が自殺を図ったことから、同国で禁止されている安楽死についての論争が再燃している。

 警察によると、84歳と81歳の夫婦が25日、市内の高級地区にある自宅マンションの一室で死亡しているのが見つかった。2人は薬を飲んで自殺したとみられており、自殺について説明する遺書もあったという。

 ビルの管理人がAFPに語ったところによると、遺体を発見したのはこの家のお手伝いさんだったという。隣人はこの夫婦について「感じのいい夫婦だった」と話しており、また別の隣人も、妻はがんを患い松葉づえをついていたが、夫婦は劇場に足を運ぶなど出掛けることが好きだったと述べている。

 22日にも、別の夫婦(ともに86歳)が市内の高級ホテル「ルテシア(Lutetia)」で自殺している。遺体は朝食を片付けに来た客室係が見つけた。夫婦はプラスチックの袋をかぶり、手をつないで窒息死していた。

 ホテルで自殺した夫婦は、第2次世界大戦(World War II)後に出会い、その後の人生を共にしてきた。「尊厳死の権利」を訴えた遺書には、一人残された息子に安楽死の権利を求める運動を促す一文も見られたという。

 フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は2012年の選挙戦で、安楽死の法制化についての検討を公約として掲げた。安楽死は、スイス、ルクセンブルク、ベルギー、オランダで合法化もしくは処罰の対象から外されている。

 12年に実施された安楽死に関する調査では、医師など第三者が意図的に患者の死期を早める「積極的安楽死」を認めるべきでないとの結論が出ている。しかし11月の仏世論研究所(IFOP)の調査によると、末期疾患の患者や耐え難い苦しみに直面する患者の安楽死について、国民の92%が賛成と答えた。

 フランスの尊厳死協会(Association for the Right to Die with Dignity)の会長、ジャン・リュック・ロメロ(Jean-Luc Romero)氏は25日、日刊紙パリジャン(Le Parisien)のインタビューで、フランスでは自殺の10%が薬物を使用したもので、残りの90%は何らかの暴力的な行為が伴っていることを指摘し、「自殺ほう助で悲劇を避けることができる。家族に見守られながら、数分で静かに苦しむことなく旅立つことができる」と説明した。(c)AFP